COVID19と鼻洗浄の有効性に関する論文
耳鼻咽喉科領域の有名論文誌のLaryngoscopeに鼻洗浄とCOVID19に関するレビューが掲載されました。
abstract
目的
鼻うがいは副鼻腔疾患に対する一般的な治療法であるが、SARS-CoV-2の鼻咽頭ウイルス量(NVL)を減少させることができるかどうかは不明である。
この系統的レビューでは、生理食塩水、ポビドンヨード(PVP-I)、および経鼻コルチコステロイド(INCS)による鼻腔洗浄が、SARS-CoV-2のNVLおよび感染率を減少させる有効性について検討した。
方法
1946年から2024年1月までの鼻洗浄とCOVID-19に関するキーワードを使用して、事前に定義された検索基準で系統的レビューを実施。テーマに沿った20件の研究が全文レビューの対象となった。
結果
生理食塩水をベースとした溶液に関する10件の研究のうち9件が、NVLを減少させるプラスの効果を報告しており、対照と比較して、鼻咽頭PCRが陰性になるまでの時間が早かったこと、および研究の初期時点におけるNVLの減少が大きかったことが利点として認められた。等張および高張生理食塩液は有効であり、3件の研究では添加剤により有効性が向上することが示された。
PVP-Iに関する7件の研究のうち4件が、NVLの減少にプラスの効果を示したが、結果はばらばらであった。4件の研究で、生理食塩水またはPVP-Iによる伝播の減少が示された。INCSに関する研究は見つからなかった。
結論
生理食塩水による鼻腔洗浄は、SARS-CoV-2のNVLの減少に最も有効であった。生理食塩水への添加物は臨床的に有益である可能性があるが、NVLに対する単独の影響を明らかにするにはさらなる研究が必要である。
PVP-Iに関するデータは結論が出ておらず、鼻うがいに理想的な濃度を決定するためにさらなる研究が必要である。
以下は要点
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鼻咽頭ウイルス量の早期減少: 鼻洗浄はCOVID-19の発症初期段階で効果があり、PCR検査の陰性化までの期間を平均2~11日早めることが示されている。
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鼻咽頭ウイルス量と感染性の関係: SARS-CoV-2の鼻咽頭ウイルス量が高いほど、感染力が強く、症状が重篤になる傾向があるため、鼻洗浄によるウイルス量の減少は感染拡大の抑制に寄与する可能性がある。
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鼻洗浄の効果: 鼻洗浄(Saline Nasal Irrigation, SNI)は、SARS-CoV-2の鼻咽頭ウイルス量(NVL)を減少させる効果があり、特に等張および高張の塩溶液が有効であることが確認された。等張食塩水と高張食塩水のどちらを使えばよいかについては有意差が出ている論文はないようだ。
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ポビドンヨード(PVP-I)の効果: PVP-Iを使用した鼻洗浄もウイルス量の減少に寄与したが、効果は一貫しておらず、濃度や使用方法に関してさらなる研究が必要とされる。
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添加物の影響: 塩水に添加物(藻類、エッセンシャルオイルなど)を加えることで、ウイルス量の減少が促進される可能性があるが、添加物自体の影響は明確には示されていない。キシリトールは糖アルコールで、抗炎症作用と抗菌作用がある。キシリトールベースの点鼻薬は、COVID-19のウイルス症状、特に嗅覚障害を改善することが、2つの異なる研究で示されている。
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鼻洗浄の頻度: 高頻度かつ持続的な使用が効果的であり、特に1日複数回の使用がウイルス量の減少に寄与することが確認されている。
鼻腔や上咽頭に付着したウイルス量を早期に減らすためにも洗浄が有効そうなことは容易に想像出来ましたが、それを裏付けるレビューとなりました。
鼻うがい自体のリスクは少ないので、可能であれば実施した方がよいでしょう。