アレルギー検査について
アレルギーの病気について
私たちの体には、外部からウイルスなどの異物が入ってきた際に、抗体を作って異物と戦う「免疫」という機能があります。
アレルギーはこの免疫反応が、特定の物質に対して過剰に起こる反応のことをいいます。
アレルギーが起こる原因は解明されていませんが、生活環境の変化や特定の物質に多くさらされているため、また、遺伝などともいわれています。
アレルギーの原因となる物質を「アレルゲン」と呼び、下記のものが有名です。
- スギやひのきなどの花粉
- 食物や薬物
- ダニ
- ハウスダスト
上記のアレルゲンに、免疫が異常反応をおこし、かゆみや痛み、時には呼吸困難などの発作を引き起こします。
また、アレルギーがもとで起こる代表的な疾患には、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹などがあげられます。
アレルギーの原因とリスク要因
アレルギーの原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、以下のような要因が関係していると考えられています。
●遺伝的な素因
親や兄弟にアレルギーがある場合、自分もアレルギーになりやすいということがわかっています。遺伝子によって、体内で作られるIgE抗体という物質の量や種類が変わり、アレルゲンに対する反応が強くなる可能性があります。
●環境的な要因
現代社会では、空気汚染や化学物質、ストレスなどの影響で、免疫システムが過敏になりやすくなっています。また、衛生的な生活や抗生物質の使用によって、体内の善玉菌が減り、免疫バランスが崩れることもあります。これらの要因が、アレルゲンに対する感受性を高めることがあります。
●生活習慣や食事
喫煙や飲酒、睡眠不足や運動不足などの生活習慣は、免疫力を低下させることがあります。また、添加物や農薬などが含まれる食品や飲料を摂取することも、体内で有害物質を増やし、アレルギー反応を引き起こすことがあります。
アレルギーの検査について
アレルギー検査とは、食物や動物、花粉などのアレルゲンに対する反応を調べる検査です。アレルギーの症状や原因を知ることは、治療や対策への第一歩となります。しかし、アレルギー検査には種類や費用がさまざまで、どのように受ければいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。アレルギー検査の種類や費用、保険適用の条件などを詳しく解説します。
アレルギーの検査は主に血液検査か皮膚検査に分けられます。
- 血液検査
血液検査は、血液中にあるIgE抗体という物質の量を測り、アレルゲンに対する感作度を判断します。血液検査は、簡単で、結果が数値化されて出るというメリットがあります。
基本的にはすべて保険適用となりますので、費用は3割負担で約3000円から6000円になります。
- 皮膚検査
皮膚検査は、アレルゲンを皮膚に塗布して反応を見る検査です。皮膚に小さな傷をつけてアレルゲンを入れたり、針で刺したりする方法があります。皮膚検査は、即時型アレルギーの診断に有効で、結果がすぐにわかるというメリットがあります。
当院では、皮膚検査は行っておらず、血液検査の中で採血を行って調べるやり方と、指先から少量の血液で調べるやり方のどちらかが施行可能です。
当院で施行できるアレルギー検査の種類
①20分で結果がわかる簡易的なアレルギー検査
- イムノキャップ®を用いた約20分で結果がわかるアレルギー検査で、忙しくてなかなか通院ができない方にもおすすめです。指先から少量の血液を採取しますが、採血は不要なので、小さなお子様にも最適です。
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費用
保険適応の検査で、3割自己負担で概ね3000円程度かかります。(他に診察料が加算されます)
結果がいつわかるか
20分程度(即日)
イムノキャップで調べられるアレルゲン(8種類)
②採血による特異的IgE検査
- いわゆる一般的な採血によるアレルギー検査です。イムノキャップやMAST36では測定できる項目が決められていますが、こちらは任意で決めることができます。
- (特別、日常生活で気になるアレルギーがなければ、スギ、ヒノキ、ハウスダスト、ダニ、ネコ、イヌ、カビなどの16項目をセットで測定することが多いです)
- 小児の場合は、抑制ぜずに採血ができるお子様でしたら可能です。
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費用
保険適応の検査で、3割自己負担で最初の1種類1170円、1項目増やすごとに+330円。16項目のセットで4000円程度かかります。(他に診察料が加算されます)
結果がいつわかるか
3-5日程度
調べられるアレルゲン
13項目まで(自由選択可能 例:モモ、グレープフルーツ、イチゴなどのフルーツやハチなどの昆虫、その他も検査会社に測定項目があるものであれば可能)
③MAST36(36種類のセット 迷ったらこれの施行をおすすめします)
- 当院では「MAST36」という採血でアレルギー症状の重要な原因アレルゲン36項目を同時に測定することが可能な検査を取り入れています。 MAST36とは、日本で一般的に接触しやすい36種類のアレルゲンに対する特異的IgE抗体の量を測定する血液検査です。特異的IgE抗体とは、アレルゲンに対して体内で作られる抗体の一種で、アレルギー反応を引き起こす物質です。MAST36では、食物アレルゲン20項目、花粉アレルゲン8項目、環境アレルゲン4項目、その他のアレルゲン4項目を一度に測定することができます
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MAST36のメリット
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- 広範囲さ
一度に36種類のアレルゲンを測定することができるため、多くの可能性を排除することができます。また、食物や花粉などの代表的なアレルゲンだけでなく、ダニやカビなどの環境アレルゲンや、ハウスダストやペットなどのその他のアレルゲンも含まれています。
- 客観性
特異的IgE抗体の量を数値化することができるため、主観的な判断に左右されずに結果を評価することができます。また、数値によってアレルギー反応の程度を分類することもできます。
費用
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保険適応の検査で、3割自己負担で概ね6000円程度かかります。
結果がいつわかるか
7日程度
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MAST36で調べられるアレルゲン
検査結果の紙は、下図のように項目ごとに0~6で数値化されて出ます。
当院で施行しているアレルギー検査のまとめ
基本的には採血のできるお子様以上には採血をお勧めしています。MAST36を行うケースが多いです。
イムノキャップは即日結果がわかり、かつ簡便で良いですが、判定に迷うこともあります。とりあえず知りたいという方や、明らかにスギやダニのアレルギーがありそうで、舌下免疫療法の導入前検査として行うには良いと考えています。
(費用は上記以外に、初診料、お薬代等がかかります)
アレルギー採血の注意点
特異的IgE抗体の量は、アレルギー反応の程度と必ずしも一致しないことがあります。例えば、特異的IgE抗体の量が高くても、アレルギー症状が出ない場合や、逆に低くても、アレルギー症状が出る場合があります。また、特異的IgE抗体は、アレルゲンに対する感作(免疫反応の準備)を示すものであり、必ずしもアレルギー疾患を診断するものではありません。したがって、採血の結果だけでなく、症状や経過などを総合的に判断する必要があります。
- 偽陽性
特異的IgE抗体は、同じような構造を持つアレルゲンに対しても反応することがあります。これを交差反応といいます。例えば、花粉症の人は、花粉と似た構造を持つ野菜や果物に対しても特異的IgE抗体を持つことがあります。これを花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)といいます。しかし、特異的IgE抗体を持っていても、必ずしもアレルギー症状が出るわけではありません。したがって、採血結果は、実際に食べたり触ったりした時の反応と比較する必要があります。
- 偽陰性性
特異的IgE抗体は、時間や年齢などによって変化することがあります。例えば、幼児期には食物アレルギーが多いですが、成長すると自然に治ることがあります。また、逆に成人期になってから新たにアレルギーを発症することもあります。したがって、採血結果は、あくまでもその時点での反応を示すものであり、将来的な予測や過去の経験と一致しないことがあります。
アレルギーの治療について
薬物治療
病院に受診したら必ずといっていいほど提案される治療です。
抗アレルギー薬が基盤となるお薬です。
ほかには、鼻のアレルギーに対して鼻噴霧ステロイド薬、ロイコトリエン拮抗薬などが良く使用されます。
重症の方や、即効性を求める方には少量のステロイド入りの内服薬が選択されます。
舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法) スギ花粉・ダニアレルギー
アレルギーの原因となっているアレルゲンを少量から毎日投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげたり、日常生活に与える影響を改善する効果が期待されます。根本的な観点からアレルギーを治療する唯一の方法とされています。
舌の下に薬剤を投与し、アレルギー反応を起こさないような身体にしていく治療法です。
現在は、スギ花粉症とダニアレルギーに対する治療が可能です。
5歳以上から開始できます。(お薬を5分間舌下においていられるのが条件です)
治療は長期間(3~5年)かかります。80%くらいの方に効果があるとされています。
スギ花粉症に対する舌下免疫療法はスギ花粉の飛散時期中は治療を開始できません。したがって、飛散時期終了後の6月以降が開始時期となります。ダニアレルギーの場合はいつでも開始できます。
手術治療 (※当院では施行しておりません)
レーザー治療(鼻の粘膜の一部を焼灼して鼻の通りをよくする手術、鼻汁への効果はそれほど高くありません)、手術治療(下鼻甲介切除術、後鼻神経切断術)などが行われます。
最近は局所麻酔で施行する手術が増えてきました。
耳鼻科医にとっては比較的一般的な手術であり、耳鼻科で手術をしている多くの病院で施行可能な手術ですが、症例数の多い専門の施設がお勧めです。
原因抗原の回避
最も基本となる治療です。検査で自分のアレルゲンとなる抗原を同定し、それを避けるような生活スタイルを心がけます。
お子様のアレルギーについて
当院では、お子様の花粉症、アレルギー性鼻炎等の診察が可能です。小児アレルギーは、下痢、嘔吐、腹痛、せき、呼吸困難、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(じんましん)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、発熱、頭痛、むくみ、など様々な症状で表れます。
よく見られるアレルギーには、食べ物がアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因となるもの)となる食物アレルギー、ハウスダストなどの吸入性アレルゲンによって発症する気管支喘息などがあります。一方で、成長とともに症状が改善・軽減していくことも多いのが小児アレルギーの特徴です。
小児食物アレルギーで特に赤ちゃん・乳幼児が、アレルギーを起こしやすいのは、卵、牛乳、大豆です。その他にも、カニ、えび、米、そば、ピーナッツ、キーウィ、メロン、マンゴー、ニンニク、セロリなどアレルギーを起こしやすい食べ物はたくさんあります。
また、こどもは気管支や腸管の粘膜などが未熟なため、アレルギー反応を起こしやすい傾向にあります。アレルギーの原因が食べ物以外の環境にあることも考えられます。
アレルギーの原因を特定し、完全に日常生活から除去するのは難しいことです。お子様が何かを口にした際にアレルギー症状が出たため、疑わし食べ物を片っ端から除去するという厳しい食事療法を行う方もいらっしゃいますが、行き過ぎた食事療法は好ましくありません。アレルギーの原因を明確にし、適切な治療を行うことが大切です。