『ゾレア』~花粉症治療の新選択~
「花粉症の季節、毎年の苦しみに終止符を打つ方法はあるのでしょうか?この記事では、重症花粉症患者に新たな希望をもたらす「ゾレア」について詳しく解説します。ゾレアとは、花粉症に対する新たな注射の治療薬です。
従来の治療法で効果が見られなかった方々にとって、この治療法はどのようなメリットをもたらすのか、また、治療の流れや副作用についても丁寧にご紹介します。
ゾレア(オマリズマブ)とは?
ゾレアとは、体内のIgEと結合し、その働きをブロックするお薬です。
どのような原理で効果を発現するのでしょうか?その理解のために、まずは花粉症の症状が起こる仕組みを簡単に説明します。
花粉症のメカニズム
- スギ花粉が鼻の粘膜に付着すると、花粉の持つたんぱく質が「アレルゲン」として認識されます。
体の免疫防御システムは、「IgE」という抗体を作ることでスギ花粉を排除しようとします。→ 花粉=敵と記憶します。 - 次にスギ花粉が体内に侵入すると、過去に経験した「スギ花粉情報」に基づき異物と見なし迎撃態勢を準備します。
- そして外敵と見なしたスギに対する免疫システム「IgE」が身体の中で産生され、肥満細胞の表面に並んで迎え撃ちます。
- スギ花粉とIgE抗体が炎症に関わる肥満細胞と結合すると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどのアレルギーを起こす化学物質が大量に放出されてしまいます。(花粉症の薬として最も知られている抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンをブロックする薬、というわけです。)
- この化学物質が神経や分泌物を出す鼻腺・血管などにある受容体にくっつき、くしゃみ・鼻汁・鼻づまり・目のかゆみなどを引き起こします。
よって、”スギ花粉を認識するIgEを持っているか”が、スギ花粉症の最も重要な入り口のカギとなります。
(スギ花粉を敵と見なすIgE抗体が体内になければ、上記のような反応は起こりません)
そこに目をつけたのが、「ゾレア」という薬剤です。
ゾレアのしくみ
ゾレア®(一般名:オマリズマブ)は、IgE抗体と結合することで、IgEと肥満細胞(マスト細胞)が結合するのを防ぎます。
その結果、アレルギー物質であるヒスタミンなどが放出されず、花粉症の症状が起こらなくなるという理屈です。
まだまだ高価な薬剤で、かつ重いスギ花粉症の方のみが対象となります。
花粉症の新たな治療薬として注目が集まっている治療法です。
どのような方に適している治療か?
既存治療でも効果不十分な重症の季節性アレルギー性鼻炎の方が対象となります。
- 内服薬を飲んでも、くしゃみ・鼻水がとまらない・鼻がつまるといった症状が治まらず、1日中ティッシュが手放せない方
- 眠気などの副作用が出やすく、もっと強力な効果が期待できる薬剤に変更・増量したいけど出来ない方
- 内服、点鼻薬、点眼薬など十分な治療を行っていても、症状が軽くならない方
以上のような方は、ゾレアの治療を検討してもよいでしょう。
ゾレアは誰にでも使用できるか?
ゾレアはすべての人に投与できるわけではありません。
以下の条件をすべて満たす場合に投与が可能です。
ゾレアの投与方法は?
ゾレアは病院内で皮下注射で投与します。初回に測定する血中IgEと体重から投与量と投与間隔を決定します。
投与スケジュールは2週間毎か4週間毎になります。(IgE値が高い方は2週間毎になることが多いです)
投与スケジュールはIgE値や体重などから、専用の換算表を用いて算出します。
ゾレアの効果は?
どのくらい効果があるのでしょうか?正直なところ、人によって様々ですので一概には言えませんが、全体的には効果があるという印象です。
以下は、ゾレアの臨床試験にデータですが、症状ピーク期のくしゃみ発作、鼻汁、鼻閉の重症度スコアがプラセボ群と比較して有意に低下していました。プラセボ群においても、フェキソフェナジン内服+点鼻ステロイド薬を全例で使用している中での有意差ですので、十分に治療効果が出ていると考えられます。
どれくらいで効果が出始めるか?
投与数日後~2週間程度で効果が出始め、1か月程度持続するといわれています。
平均的な自己負担額
- 1回の投与量150mgの方で8,744円、300mgの方で17,488円となります。(3割負担の場合でもこのくらいかかります)
これに加えて、受診・検査にかかる費用、同時に服用し続ける必要のある抗ヒスタミン薬の処方費がかかります。
- 小児は12歳以上が適応ですが、こども医療費などの医療助成が受けられます。
- 非常に高額なお薬であることをご了承ください。
ゾレアの治療スケジュール
当院でゾレアを投与されたことがない方
(投与日を入れて計3回の受診する必要があります)
当院で1年前にゾレアを投与した方
治療の効果とその限界
シーズン限りの効果とその後の治療選択
ゾレアは重症のスギ花粉症患者に対して効果的な治療法ですが、その効果は主に治療を受けているシーズンに限定されます。
治療後の症状の改善は顕著ですが、次のシーズンには再び症状が現れます。花粉の飛散が多い年や重要なイベントのある年には使用して、中長期的には舌下免疫療法などでのコントロールを考えても良いと思います。舌下免疫療法は、アレルゲンを少量ずつ体内に取り入れることで、徐々に体の耐性を高める方法です。
副作用と安全性
ゾレア治療においては、稀にアナフィラキシーショックという重篤なアレルギー反応が発生するリスクがあります。このリスクに対処するためには、治療を受ける際には常に医療機関での監視下で行うこと、また、アナフィラキシーショックの初期症状を理解し、速やかに医師の診断を受けることが重要です。万が一の場合に備えて、緊急時の対応プランを事前に確認しておくことも大切です。
ゾレアには他にも、注射部位の反応(痛みや腫れ)、頭痛、疲労感などの副作用が報告されています。これらの副作用は通常軽度で、時間とともに自然に解消されることが多いです。しかし、副作用が長引く場合や不安を感じる症状がある場合には、速やかに医師に相談することが重要です。また、ゾレアは特定の条件を満たす患者にのみ適用されるため、治療を受ける前には十分な検査と医師の診断が必要です。
製薬会社リンク
以下の製薬会社のリンクもご参照ください。