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頭頸部がんについて

頭頸部がんとは?

頭頸部とは、首から上の脳と眼を除いた部分すべてを指します。頭頸部がんはこの部位にできるがんの総称です。主に口腔(舌を含む口の中)、喉頭、咽頭、鼻腔、副鼻腔、唾液腺、耳などの部位で発生します。甲状腺も頭頸部に含まれます。

頭頸部がんの初期症状は、発生する部位により様々ですが、喉の痛みや腫れ、声のかすれ、吐き気、飲み込みにくさなどです。これらは、風邪や喉の炎症などの症状と似ているため、初期の頭頸部がんは見過ごされることが多いです。しかし、症状が悪化すると、頭頸部の腫れや痛み、血液が混じった唾液、口内にできる白板状のものなど、症状が目立つようになります。頭頸部がんは、進行しやすいがんとして知られていて、おおよそ半分の症例でステージ3以上で発見されます。進行している状態ですと、治る確率が低くなります。加えて、病気が進行している場合は、大きな手術や抗がん剤と放射線治療が必要になり、がんが治ったとしても治療によって失われるものが大きいのも特徴です(声が出なくなる、味がしなくなる、においがしなくなる、唾液が出なくなる、飲み込めなくなるなど)。

早期の病変であれば、よりリスクが少なく治すことができるため、早期発見&早期治療が重要です。

頭頸部がんの原因とリスクファクター

頭頸部がんの主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • タバコやアルコールの過剰摂取
  • HPV感染
  • 歯牙や義歯の接触などの慢性刺激
  • 遺伝的要因

特に、タバコやアルコールの過剰摂取は、頭頸部がんの発生リスクを高めます。

頭頸部がんの症状

頭頸部がんの初期症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • のどの痛みや喉のしこり
  • 声のかすれ
  • 口内の白斑や赤斑
  • 飲み込みにくさ
  • 耳の痛みや聴力障害
  • 喉頭から出血

これらの症状がある場合は、早期発見のためにも医師の診断を受けることが重要です。

何科を受診すればよいか?

首から上に複数の症状がある場合や、症状が漠然として部位を特定できない場合、「のどが痛くて、食べ物が飲み込みにくい。あごの下に違和感がある…」などという症状がある場合、病院に行っても何科を受診すればよいか迷います。

頭頸部を診療範囲とするのは「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科というと、耳、鼻、のどの病気だけを扱うと思っている人も多いようですが、口内炎や舌の痛みなども耳鼻咽喉科が担当します。意外と知られていませんが、耳鼻咽喉科は診療範囲が広いのです。

頭頸部にできた「がん」も、耳鼻咽喉科の領域です。ただ、頭頸部のがんは手術治療が中心となるため、手術に際しては「頭頸部外科」という専門領域があります。

首から上の不調で何科に行けばいいか迷った場合や、症状にがんの疑いがある場合は、まずは耳鼻咽喉科を受診してみてください

頭頸部がん検診は一般的ではない

言葉通り頭頸部がんを発見するための検診です。後述するような検査を行います。当院で行う場合は主に視診・触診・内視鏡検査が中心です。それ以上の検査であるCT・MRI・PET-CTなどは設備がないため施行できませんが、早期がんは画像検査での検出が難しく内視鏡検査の方がより感度が高いこと、もし進行がんがあった場合は一目瞭然であり専門施設での精査をお勧めすることなどから、頭頸部がん検診での画像検査の必要性は高くないと考えます。(やって悪いということではありません)

一般的ながん検診には、頭頸部がん検診という項目が含まれていることはほとんどないと思います。一部の地域では「喉頭がん検診」が行政主導で行われています。

頭頸部がん検診があまり行われていない理由は、主に以下のような理由が挙げられます。

患者さんの数自体が多くないため、頭頸部がん自体が知られていない

胃がんや大腸がんに比べると患者さんの数自体が少ないため、そもそも疾患自体が知られていません。実は頭頸部がん全体では世界でも6,7番目に多いとされていますが、舌がん、喉頭がんなどに細分化されているため、それぞれの有病率は非常に低く、がんとしての認知度が高くありません。たまに著名人が「咽頭がん」や「喉頭がん」で治療したというニュースが出ると一時的に相談が増えます。

検診に専門的な知識や経験が必要である

頭頸部がんの検診は、専門的な知識や技術が必要であるため、一般の医療機関では行えないことが多いです。そのため、検診を受けるには、専門の医療機関に訪れる必要があります。また検診を施行できる知識や経験を持った医師の数自体が少なく(頭頸部がんを専門にする医師はかなり少ない)、検診の利用が制限されるという問題があります。

検診対象者の選定の難しさ

頭頸部がんの検診は、定期的な健康診断を受けている人が対象となりますが、がんのリスクファクターとなる喫煙や過剰なアルコール摂取など、生活習慣に関する要因が非常に複雑であるため、対象者の選定が難しいとされています。

頭頸部がんのリスクが高い方

頭頸部がんのリスクがあるためチェックをお勧めしたい方は以下の通りです

飲酒、喫煙の習慣がある方

頭頚部がんは飲酒や喫煙と非常に関連性の高いがんです。

ご家族に頭頸部がんの患者さんが多い方

研究によると、頭頸部がんのリスクは、家族歴のある人の場合、家族歴のない人に比べて約2倍高いとされています。

頭頸部がんには、口腔内、喉頭、咽頭、鼻咽頭、唾液腺などの部位が含まれます。これらのがんは、喫煙やアルコールの過剰摂取、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などの要因によって引き起こされることが多いですが、遺伝的な要因も影響しているとされています。

例えば、特定の遺伝子変異が頭頸部がんの発症に関係していることが示されています。また、家族内で発生する頭頸部がんの場合、同じ遺伝子変異が家族全員に共通している可能性があります。これが家族歴が頭頸部がんの発症リスクを高める一因となるのです。

ただし、家族歴があるからといって必ずしも頭頸部がんになるわけではありません。遺伝的な要因以外にも、喫煙やアルコールの過剰摂取、HPV感染などのライフスタイル要因も影響しています。したがって、遺伝的な要因がある場合でも、健康的な生活習慣を維持することが重要です。

症状がある方

頭頸部がんの初期症状として、のどの痛みや喉のしこり、声のかすれ、口内の白斑や赤斑などが挙げられます。これらの症状がある方は、早期発見のためにも頭頸部がん検診を受診することをお勧めします。

頭頸部がんに対する診察の内容

視診

特に口腔内や咽頭内の腫瘍は視診が重要です。表面が不整であること、易出血性(出血しやすい)であること、広基性(キノコのように生えている(有茎性)のでなく、山のすそ野のように広がって存在している)であること、辺縁不明瞭であることはより悪性腫瘍をうたがう所見です。

触診

口腔内の腫瘍、頸部の腫瘍は触診が重要です。腫瘍が硬ければ硬いほど、動きが悪ければ悪いほど悪性腫瘍をうたがいます。痛みを伴うケースは比較的少ないため、痛みの有無のみで判断するのは危険です。

細胞診、組織診(※当院では施行できません)

癌が疑われる病変があった場合は必ず施行される検査です。頭頸部がんの場合は、この検査なしにがんと診断することはないと言っても過言ではありません。病変の一部を取り(穿刺、擦過、切除など様々な方法があります)、顕微鏡レベルで癌細胞の有無を確認する検査です。通常は大きな病院でなければできないため、生検が必要そうな病変を認めた場合は、大学病院にご紹介させていただいております。

血液検査

癌と一口にいっても種類はたくさんあり、それぞれにおいて血液検査で調べる腫瘍マーカーはバラバラです。頭頸部癌や食道癌、肺癌といった名称はあくまで部位を表しており、発生母地の組織によって扁平上皮癌腺癌乳頭癌神経内分泌癌などの種類に分類されます。(「胃に発生した腺癌」といった言い方です。)その種類それぞれに応じた血液検査の数値が、腫瘍マーカーと呼ばれるものです。がん検診では必要に応じて必要な腫瘍マーカーも測定しますが、あくまで補助として用いられるもので、値が高い=癌があるということではありません。頭頸部がんは90%が扁平上皮癌という組織型になるため、そのマーカーとなりうるSCC、CYFRA、CEAを測定します。

内視鏡検査

1960年代に光ファイバーが開発され、内視鏡の歴史が始まりました。1980年代からスコープの先端にCCDカメラを装着できるようになり、2007年1月からオリンパス社からNBI(Narrow Band Imaging)が発売され、ハイビジョン画像と組み合わせることで詳細な観察と癌の早期発見が可能となっています。NBIとは、早期癌の特徴である粘膜直下のらせん状の毛細血管を、限られた波長の光源で観察することで目立ちやすくし、一般的な白色光では見えにくい早期の病変を発見しやすくするものです。癌も早期に発見できれば、内視鏡治療や外来での放射線のみの治療など、比較的負担の少ない治療法が選択できます。

耳鼻咽喉科の内視鏡について

超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、産婦人科の検診や肝胆膵の消化器内科などでなじみ深い検査です。簡便で痛みを伴わず、CTなどのような放射線の被ばくの心配もないため、非常に汎用性が高い検査となっており、頭頸部領域においても頻用されます。
甲状腺耳下腺顎下腺頸部リンパ節などにある腫瘍の性状を確認できることはもちろん、腫れている原因が腫瘍なのか、炎症なのか、膿瘍(うみ)を作っているのかなどがある程度類推できます。良性なのか悪性なのか、どのような細胞から腫れものが成り立っているのかを確認するためには、穿刺吸引細胞診が必要です。こちらに関しては、当院では対応できないため、高次医療機関へご紹介して行う検査になります。

CT・MRI(※当院では施行できません)

病変の有無を客観的に評価する検査で、がんの「ステージ」を決定するために必須の検査です。がんを診断した場合は必ず行われます。

一方で、CTやMRIはある程度の病変のサイズがないと同定はできませんので検診としての検査には不向きです。逆に頚部の腫れなどがある場合は有用です。検査装置がないとできませんので、当院では施行できないため、もし必要と思われたら他施設を紹介しております。

PET検査

行える施設に限りはありますが、がんが疑われる場合や治療前に遠隔転移を確認する場合に行うことがあります。

早期発見の重要性

例えば咽頭がんの場合、早期発見、早期治療ができれば、全身麻酔は必要ですが、癌と周辺の粘膜を切除可能で内視鏡を使用し切除できるので入院も1週間程度、機能障害もほぼ残らずに治療が可能です。しかし、進行した場合、手術であれば喉頭を大きく切除しなければならず、声が出ないなどの重篤な後遺障害が残ることもあり、放射線や抗がん剤での治療ではのどを温存可能ですが治療の影響でのどの違和感や、食事ができなくなるなどの症状が出現する可能性があり生活の質が大きく低下します。早期に発見し早期の治療が非常に重要となります。

頭頸部がんには、早期発見のための定期健康診断がほとんどないため(一部の自治体では喉頭がん検診が行われています)、ご自身で気づき、病院を受診するしかありません。

また、病気を発見するためには当然最新の機器も必要ですが、慣れた眼で見ることが重要です。検診に行かれる際には、ある程度頭頸部がん診療の経験がある医師に診てもらうことをお勧めします。

最新の機械があっても正確な診断眼がないと猫に小判です。10年以上大学で培った診断眼で早期の病変の発見に努めてまいりますので、上記症状に思い当たる場合は受診を検討ください。

当院での検査費用

約5,000(初診、3割負担の方)

基本的には保険診療で対応しますが、上記のような症状がない(無症状の)方の受診は、検診に該当します。この場合、保険診療の対応はできませんので、実費負担していただきます。

検査結果について

一般的な内科検診のような検診結果の紙はご用意しておりません

*血液検査以外は即日ご説明いたします。血液検査は結果が出るまで約1週間程度かかります。

頭頸部がんの治療方法

頭頸部がんの治療法には、以下のようなものがあります。

  • 手術:がん細胞を摘出する手術。
  • 放射線治療:がん細胞を破壊する放射線を照射する治療。
  • 化学療法:がん細胞を破壊する薬剤を投与する治療。
  • 免疫療法:がん細胞を攻撃する免疫細胞を活性化させる治療。

これらの治療法は、病気の進行度合いや患者の状態によって選択されます。

頭頸部がんの予防法

頭頸部がんの予防法には、以下のようなものがあります。

  • タバコやアルコールの過剰摂取を避ける。
  • 口腔内を清潔に保つ
  • HPV感染を予防するため、適切な性教育を受ける。
  • 適度な運動やバランスの良い食生活を心がける。

これらの予防法を実践することで、頭頸部がんの発生リスクを低減することができます。

 

 

記事執筆者

池袋ながとも耳鼻咽喉科
院長 長友孝文
日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会 専門医    


医院情報


医院名  池袋ながとも耳鼻咽喉科


所在地  〒170-0012 
      豊島区上池袋4-29-9  北池テラス4階


電話番号 03-6903-4187 


診療科目 耳鼻咽喉科 / 小児耳鼻咽喉科 / アレルギー科


 

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