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聴力検査について

聴力検査の重要性とその目的

私たちの聴力は、情報の収集、コミュニケーション、楽しみ、さらには身の安全を守るために、日々の生活で不可欠な役割を果たしています。そのため、聴力の健康状態を定期的にチェックすることは大切な健康管理の一部となります。本記事では、当クリニックで行っている主要な聴力検査(純音聴力検査、語音聴力検査、ティンパノメトリー)について、その目的、手順、評価方法などを詳しく解説します。

標準純音聴力検査について

一般に、聴力検査という場合は標準純音聴力検査(測定)のことをさします。聴力検査の中では最も基本的な、そして重要な検査です。標準純音聴力検査(測定)の目的は二つあります。一つは聞こえの程度が正常か異常か、異常とすればどの程度の聞こえの悪さかということを検査することです。もう一つは、聞こえの悪さがどの部位の異常によるものかを大まかに判断することです。

低い音(125Hz)から高い音(8000Hz)まで全部で7周波数(125、250、500、1000、2000、4000,8000Hz)を測定し、難聴の有無や難聴の種類を調べます。聞こえにくい、聞き返しが多い、耳が詰まっている、膜が張っているといった症状の場合や健康診断で聴力の異常を指摘された場合に、まず初めに行う検査です。
 
気導(耳から直接聞こえてくる音)、骨導(骨を伝って聞こえてくる音)の2種類を左右とも行います。
① 気導
下の図に示したように、耳介→外耳道と音が導かれ、鼓膜を振動させて、その振動は3つの耳小骨を順々に伝わり、蝸牛(かぎゅう)へと到達します。蝸牛では物理的な振動のエネルギーが、神経の興奮という電気的なエネルギーへと変換されます。この電気的エネルギーあるいは電気的なシグナルは蝸牛神経を通って、脳へと伝わっていきます。

② 骨導
最初の部分(耳介→外耳道→鼓膜→耳小骨)が省かれて、いきなり側頭骨から蝸牛へと音の振動が伝わります。ただし、蝸牛以降の信号の伝わり方は、気導と同じです。

聴力検査の結果

聴力検査の結果は、オージオグラムと呼ばれるグラフで表示されます。横軸に周波数、縦軸に聴力レベル(dB:デシベル)が記され、それぞれの検査で得られた結果がプロットされます。

一般的に赤が右耳、青が左耳。気導は折れ線グラフ、骨導はカギカッコで表示されます。

主な聴力検査の結果を以下に示します。それぞれの周波数で、聞こえた中で最も小さな音をプロットしていきます。例えば、左側の図でいうと、125Hzは左右とも10dBの音で聞こえたということになります。

(左)正常聴力:すべての周波数で気道も骨導も20dBよりも小さな音で聞こえています

(中)感音難聴:平均して気導も骨導も50dBくらいの音でないと聞こえていません。これくらいですと難聴としての自覚症状があります。加齢性難聴などはこれにあたります。

(右)伝音難聴:カギカッコ(骨導)は良く聞こえていますが、折れ線(気導)が悪いです。このような場合は、滲出性中耳炎などの病気を疑います。

聴力検査結果の読み方

聴力の度合いによって難聴の程度は分類されます。難聴の程度は、音の大きさ(dB)を目安にして「軽度難聴」「中等度難聴」「高度難聴」「重度難聴」の4つのレベルに分類されます。

難聴の程度分類 聴力レベル(dB) 自覚内容
正常 25dB未満

軽度
難聴

25dB〜40dB 小さな音や騒音がある中での会話の聞き間違いや、聞き取りにくさを感じる
中等度
難聴
40dB〜70dB 普通の大きさの会話での聞き間違いや聞き取りにくさを感じる
高度
難聴
70dB〜90dB 非常に大きい声か、補聴器を装用しないと会話が聞こえない。聞こえても聞き取りに限界がある。
重度
難聴
90dB以上 補聴器でも聞き取れないことが多い

正常の場合は、おおむねどの周波数も良く聞こえていますが、難聴が始まると、周波数によって聞こえ方は異なるため、一概に上記の数値に当てはめるのは難しくなります。

聴力レベルの数値を出す場合は、4分法という計算方法を用いることが多いです。

【4分法による平均聴力算出式】
{“500Hzの聞こえ”+(“1000Hzの聞こえ”×2)+“2000Hzの聞こえ”}÷4

人間が言語で生活するには、500-2000Hzの音が最も重要なので、上記の計算方法を用いています。

音の大きさの参考値

日常生活でよく耳にする音の大きさは下記の図のようになっています。

木のそよぎ(20dB)が聞こえない場合には軽度難聴。小雨の音(40dB程度)が聞こえない場合は軽度~中等度難聴。日常会話(60dB程度)が聞こえない場合は、中等度難聴。ピアノの音(80dB程度)が聞こえない場合は、高度難聴。車のクラクション(110dB程度)や飛行機の通過音(120dB程度)が聞こえないと重度難聴となります。

よって、聴力検査で60dBを下回るような数値が出ると、日常会話でかなりの制限が生じている状態です。

「難聴」と一概に言っても、木のそよぎが聞こえない程度の「軽度難聴」から、車のクラクションやジェット機の通過音も聞こえない「重度難聴」まで、人によって大きく程度が異なるのです。

聴力の加齢性変化

人間の聴力は、当然のことですが加齢に伴って徐々に悪くなります。以下に加齢による聴力低下の平均的な傾向を示します。

加齢に伴って高音から徐々に聞こえが悪くなりますので、右肩下がりの折れ線グラフになることが多いです。

 

オージオメーター

聴力検査の際に使用する音を出す装置です。

聴力検査装置

防音室

聴力検査は周囲に雑音のある環境では正確な検査が出来ませんので、写真のような防音の部屋で行われます。二重扉で、部屋の中にまた部屋を作るような感じで、壁も相当厚くしてあります。

聴力検査室

標準順音聴力検査の手順

①聴力検査室へご案内

聴力検査室に案内している写真

②ヘッドホンの装着

聞こえの検査の準備をしているところ

③検査開始

聞こえの検査

※実際は検査室の扉は閉まり、外からの音は聞こえないようになっています。

④結果のご説明

その他の聴力検査

語音聴力検査

語音聴力検査は、実際の会話を模擬した状況での聴力を評価するための検査です。このテストは、純音聴力検査とは異なり、実際の言葉の理解度を直接測定します。

日常会話で使われる語音、「ア」とか「イ」とかいう語音や数字が使われます。検査語音がどの程度の音の大きさだと何%正しく聞こえるかを調べる検査です。

語音明瞭度は、補聴器の効果を示す目安になるので、主に補聴器を作成する必要がある方に行う検査です。

ティンパノメトリー

ティンパノメトリーは、中耳の状態を評価するための検査です。この検査では、専用のプローブを耳道に挿入し、空気圧を変えながら、鼓膜の動きを評価します。

ルーティンで行われる検査ではありませんが、滲出性中耳炎や耳小骨の異常などが疑われる場合に行われます。

(左)正常:山が形成され、頂点が0のところにあります。

(右)滲出性中耳炎などで鼓膜の動きが悪くなっている状態

耳小骨筋反射検査(SR)

耳小骨筋は、鼓室の中にある耳小骨に付いている筋肉で、アブミ骨筋と鼓膜張筋の二つがあります。鼓膜に大きな音が加わると、内耳の障害を防ぐためにそれらの筋肉は耳小骨の動きを制限しようと収縮します。おおむね90~100dBという大きな音を聞かせると耳小骨筋が収縮し鼓膜の動きを抑えます。実際に記録されるのは主にアブミ骨筋の収縮なので、アブミ骨筋反射とも呼ばれています。

検査を行う方の耳に耳小骨筋の一つは顔面神経に支配されているので、この検査で顔面神経の障害がおおよそどこで発生したかがわかります。よって、顔面神経麻痺の際には必ず行う検査です。

検査を行う方の耳に耳栓を入れ、反対耳にはヘッドホンをつけて検査します。徐々に大きな音を聞いて耳小骨の収縮の様子を波形に出します。

 

 

記事執筆者

池袋ながとも耳鼻咽喉科
院長 長友孝文
日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会 専門医    


医院情報


医院名  池袋ながとも耳鼻咽喉科


所在地  〒170-0012 
      豊島区上池袋4-29-9  北池テラス4階


電話番号 03-6903-4187 


診療科目 耳鼻咽喉科 / 小児耳鼻咽喉科 / アレルギー科


 

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