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溶連菌感染症

溶連菌感染症とは何か?

「溶連菌感染症」と聞いて、どのような病気を思い浮かべますか? 子供たちに多く見られるこの感染症は、特定の細菌によって引き起こされ、季節によって流行することがあります。しかし、その症状や治療方法は意外と知られていないかもしれません。この記事では、溶連菌感染症の原因から症状、診断方法、治療法、さらには予防策や他の病気との関連に至るまで、包括的に解説します。家庭でのケア方法や学校での対応策も含め、溶連菌感染症についてのあらゆる疑問に答える内容となっています。読み進めることで、溶連菌感染症の理解を深め、適切な対処法を身につけることができるでしょう。

溶連菌感染症の原因となる細菌の種類

溶連菌にはA群、B群、C群、G群など多くの種類が存在しますが、溶連菌感染症の約9割はA群によるものです。一般的にいう『溶連菌感染症』とは、その主な原因菌である『A群β溶血性レンサ球菌』によって引き起こされる咽頭炎や扁桃炎などの症状を示します。

主な感染年齢層と流行時期

溶連菌感染症は、特に5歳から15歳の子どもたちに多く見られます。この年齢層の子どもたちは、学校や保育園などの集団生活において、容易に感染するリスクが高まります。流行時期は春から夏にかけてと、冬に集中しており、これらの時期には特に注意が必要です。

感染経路

溶連菌感染症の主な感染経路は、感染した人の咳やくしゃみによって飛散する飛沫(ひまつ)感染です。感染者が咳やくしゃみをした際に出る唾液や鼻水に含まれるA群β溶血性連鎖球菌が、他の人の口や鼻、目などの粘膜に接触することで感染します。

また、接触接触による感染もあります。感染者の皮膚や喉の粘膜に触れた手で、自分の口や鼻、目などを触ることで感染する可能性があります。感染者が使用した食器、タオル、寝具などの共有も感染リスクを高めます。

溶連菌感染症は、特に子どもが集まる場所(学校、保育園、幼稚園など)での感染が多く見られます。これは、子どもたちが密接に接触する機会が多く、手洗いなどの衛生管理が徹底されていない場合があるためです。

溶連菌感染症の症状

溶連菌感染症は、主に咽頭炎や扁桃炎を引き起こす病気です。感染は飛沫感染や接触感染により起こり、2日から5日の潜伏期間を経て発症します。

感染すると、38〜39℃の発熱と喉の痛みが主な症状として現れます。特に3歳未満の子どもでは、高熱が出ないこともあります。

症状の進行に伴い、体や手足に小さな赤い発疹が現れることがあり、舌にはイチゴのような突起(イチゴ舌)が見られることもあります。その他、頭痛、首のリンパ節の腫れ、腹痛や嘔吐などの腹部症状も見られることがあります。風邪と異なり、咳や鼻水は伴わないのが特徴です。

 

溶連菌の診断

溶連菌感染症の診断は、主にのどの奥の粘液を採取し、迅速検査を行うことで行われます。この検査は約5-10分で結果が出ます。また、ほとんどの場合は不要ですが、症状や状況に応じて血液検査も実施されることがあります。これにより、感染の程度や合併症の有無をより詳しく把握することができます。(当院では小児に対する採血は行っておりません)

溶連菌の治療とその期間

溶連菌感染症の治療には、ペニシリン系を中心とした抗菌薬が用いられます。通常、抗菌薬は10日間程度服用が推奨されます。治療を開始して1~2日で熱も下がり、のどの痛みも和らぐことが多いです。しかし、溶連菌は症状が消えた後も体内に残ることがあり、完全な治癒を確実にするためには、医師の指示に従って薬を最後まで服用することが重要です。

再発と合併症のリスク

溶連菌感染症は再発しやすい病気であり、特に治療を中断した場合、症状が再び現れるリスクがあります。また、合併症として「リウマチ熱」や「急性糸球体腎炎」といった重篤な疾患を発症する可能性もあります。これらの合併症は、感染から2~3週間後に発症することが多く、適切な治療とフォローアップが必要です。

溶連菌感染症の予防とホームケア

感染経路と予防策

溶連菌感染症は、飛沫感染や接触感染によって広がります。感染者の咳やくしゃみから放出される唾液の飛沫を吸い込むこと、または感染者が触れた物に接触した後、自分の口や鼻を触ることで感染する可能性があります。予防策としては、定期的な手洗い、咳エチケットの徹底、感染者との接触を避けることが重要です。また、感染者の使用したタオルや食器は共有せず、定期的に消毒することも効果的です。

 

兄弟間の感染と検査の重要性

溶連菌感染症は家庭内での感染がよく見られるため、兄弟間での感染に注意が必要です。兄弟間の感染を防ぐためには、感染した子どもの個人用品を他の子どもと分けることが重要です。また、感染した子どもがいる場合は、他の子どもも検査を受けることを検討すると良いでしょう。

学校や保育園での対応

溶連菌感染症は、学校保健安全法の出席停止となる疾患として、明確には定められていませんが、多くの地域で「第三種の感染症*1」として出席停止の措置が取られています。

*1第三種の感染症:学校で流行が起こった場合、その流行を防ぐために必要に応じて校長が学校医(園医)の意見を聞き、「第三種の感染症」として出席停止にできます。

(参考)登校に関する医師の証明書(区立小中学校・区立幼稚園)|豊島区

https://www.city.toshima.lg.jp/354/kosodate/gakko/sho-chu/gakkohoken/014726.html

溶連菌感染は抗生物質による治療開始後、24時間程度で感染力はなくなります。全身状態が良ければ、だいたい2日後には登校可能です。ただし、慢性化および合併症リスクを減らすために医師から処方された抗生物質は、症状が改善してきても指示に従って最後まで飲み切ることが大切です。

溶連菌感染症と他の病気との関連

溶連菌感染症とリウマチ熱

リウマチ熱は、溶連菌感染症の合併症として知られています。これは、溶連菌による感染後、数週間で発症する可能性があり、特に心臓、関節、皮膚、神経系に影響を及ぼす病気です。リウマチ熱の主な症状には、発熱、関節の痛み、皮膚の発疹、心臓の問題などがあります。リウマチ熱は適切な治療を行うことで管理できますが、未治療の場合、心臓に長期的なダメージを与える可能性があります。

溶連菌感染症と急性糸球体腎炎

急性上気道炎を中心とする感染(主にA群β溶連菌)の後に、10日前後の潜伏期間を経て血尿・蛋白尿、尿量減少、むくみ(浮腫)、高血圧で発症する一過性の急性腎炎症候群です。

小児~若年者に多い疾患ですが、成人にもみられます。感染の軽快とともに尿所見、腎機能も回復することが多く、比較的予後はよい疾患ですが、時に尿所見異常が遷延し、腎機能障害が残ることもあります。

現在は、溶連菌感染に対する治療後の尿検査については様々な意見があります。

以前は、溶連菌後2-3週間後に尿検査実施して腎炎になっていないかチェックすることがスタンダートでしたが、最近では「溶連菌感染症後の尿検査は不要である」という主旨の研究結果も出ております。

学んだ世代によっても意見がわかれそうなところですが、小児科医では感染後の尿検査を行っている先生も少なくないと思います。

いずれにせよ、この腎炎では、「おしっこの量が減る、おしっこが茶色くなる、顔や手足がむくむ」といった症状が出ますので、溶連菌感染が診断された後にそのような症状が出た場合は、早めに病院を受診した方がよいでしょう。

他の病気との鑑別診断

溶連菌感染症は、その症状が他の多くの病気と類似しているため、正確な診断が重要です。例えば、ウイルス性咽頭炎(アデノウイルスなど)、インフルエンザ、溶連菌以外の細菌性扁桃炎などとの鑑別が必要です。これらの病気は、症状が似ているものの、治療法が異なるため、医師は症状の詳細な評価、検査結果、患者の医療歴などを総合的に考慮して診断を下します。正確な診断により、最適な治療計画を立てることができます。

 

 

記事執筆者

池袋ながとも耳鼻咽喉科
院長 長友孝文
日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会 専門医    


医院情報


医院名  池袋ながとも耳鼻咽喉科


所在地  〒170-0012 
      豊島区上池袋4-29-9  北池テラス4階


電話番号 03-6903-4187 


診療科目 耳鼻咽喉科 / 小児耳鼻咽喉科 / アレルギー科


 

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