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顔面神経麻痺

顔面神経麻痺とは何か?

1-1. 顔面神経麻痺の一般的な症状と影響

顔面神経麻痺の代表的な症状は、顔の筋肉の動きが悪くなる病気で、顔が歪んだり、目が閉じにくくなったりすることです。これは顔の筋肉が正常に機能しなくなるためです。筋肉を動かす指示を下すのは神経の仕事ですので、顔面神経麻痺がおこると顔面の表情筋が動かなくなります。表情筋の麻痺は、見た目の変化だけでなく、時には食事、会話にも影響し、患者さんの自信や社会生活にも影響を及ぼす可能性があります。

1-2. 年間発症率と後遺症の可能性

顔面神経麻痺は年間人口10万人あたり約50人が発症する一般的な病気で、日本では毎年4~5万人が罹患するとされているまれではない疾患です。患者の約2割以上に治療後も後遺症が残ります。後遺症には顔の筋肉の動きが完全に戻らないことや、微妙な表情が作りにくいことなどがあり、日常生活や社会生活に影響を及ぼすことがあります。早期の正確な診断と適切な治療が後遺症を最小限に抑えるために重要です。

顔面神経麻痺の主な原因

2-1. ウイルス性神経麻痺とその種類(例:ベル麻痺、ハント症候群)

顔面神経麻痺の原因の中で最も一般的なのは、ウイルス性の神経麻痺です。

ベル麻痺

最も多い原因で、顔面神経麻痺の約60%以上を占めています。ベル麻痺は、単純ヘルペスウイルスの再活性化が関与しているとされています。次のハント症候群よりも予後は良好で治療への反応も悪くありません。

ハント症候群

全体の約20%を占めています。ハント症候群は、耳の痛みや突然の顔の動きの困難さを特徴とし、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因であると考えられています。

聴力低下、めまい、耳の痛みが同時に出ることもありますが、そういった症状が一切ない場合は、ベル麻痺との鑑別が難しいこともあります。

 

いずれもウイルスの再活性化が原因と考えられており、疲れやストレスが原因で免疫力が低下すると、これらのウイルスが活性化し、顔面神経を攻撃することがあります。

後述するステロイド治療とともに抗ウイルス薬の投与が推奨されています。

2-2. その他の原因(例:事故や外傷、外科手術の後遺症)

顔面神経麻痺の原因はウイルス性のものだけではありません。事故や外傷、外科手術の後遺症など、物理的なダメージによっても顔面神経麻痺が引き起こされることがあります。例えば、頭部への強い衝撃や顔面部の手術などが原因で、神経が損傷を受けることがあります。これらの場合、麻痺は通常、事故や外傷の直後に発生することが多いです。

また、耳の病気や腫瘍など、他の医療状態が顔面神経麻痺を引き起こすこともあります。これらの病気は、顔面神経を圧迫することによって麻痺を引き起こす可能性があります。そのため、顔面神経麻痺の症状が現れた場合には、これらの可能性も考慮に入れて、適切な診断と治療が必要となります。

顔面神経麻痺の診断と治療

3-1. 早期診断の重要性と耳鼻咽喉科・頭頸部外科の役割

顔面神経麻痺の治療で重要なのは、発症後7日以内の早期診断です。

この疾患を主に診療しているのは、耳鼻咽喉科・頭頸部外科か神経内科が多いと思われます。診断には、症状の聴取、診察、筋肉の動きの検査、時には画像診断などが含まれます。

3-2. 治療方法と新しい選択肢(例:ステロイド鼓室内投与)

顔面神経麻痺の治療には、いかなる原因であれ、発症早期にはステロイド薬が使用されます。また、ベル麻痺やハント症候群では抗ウイルス薬の投与も同時に行われます。

ステロイド投与に関してはエビデンスレベルも高く、「顔面神経麻痺診療ガイドライン」でも、必ず行うべき治療といえます。

その他の治療法として「ステロイド鼓室内投与」が注目されています。この方法では、鼓膜を通じて鼓室内に直接ステロイド剤を投与し、効果的な治療を目指します。特に重症の患者には、通常量のステロイド全身投与に加えて行うことで有効があることがあると報告されています。(当院では施行しておりません

また、重症例には、顔面神経減荷術という手術治療を行うこともあります。顔面神経は脳から出て耳の中を通り、顔に分布しているのですが、この手術は、耳の中で骨の中を通る顔面神経の圧迫を解除するために、神経の周りを包む骨を削る手術です。現時点では有効性のエビデンスレベルが低く、標準治療としては推奨できないとされていますが、もちろん有効性も報告されており、重症の場合は施行してもよいと考えられます。

リハビリテーションと後遺症管理(当院では施行しておりません)

4-1. 正しいリハビリテーションの重要性

顔面神経麻痺により、顔の筋肉が動かなくなると、筋肉が固まってしまうことがあります。この固まりを防ぐためには、正しいリハビリテーションが必要です。顔面神経麻痺の場合、顔の筋肉を無理に動かすと後遺症が重くなるリスクがあるため、専門的な指導が重要です。耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、筋肉のこわばりやひきつれの回復に向けた専門的なリハビリテーションを提供しています。これには、筋肉をほぐすマッサージや温める治療、顔の運動訓練などが含まれます。

4-2. 顔面神経麻痺相談医制度とリハビリテーション指導士の役割

顔面神経麻痺からの回復を支援するために、「顔面神経麻痺相談医」と「顔面神経麻痺リハビリテーション指導士」の制度が設けられています。この制度は、顔面神経麻痺の患者さんが適切なケアを受けられるようにするためのものです。顔面神経麻痺相談医は、症状の診断や治療計画の立案を行い、リハビリテーション指導士は、患者さんの日常生活における注意点や運動訓練の方法を指導します。これにより、患者さんは顔面神経麻痺の後遺症を最小限に抑え、より良い生活を送ることができるようにサポートされます。

日常生活での対策とサポート

5-1. 患者の日常生活での注意点

顔面神経麻痺の患者は、食事時に食べ物がこぼれる、目の乾燥、会話や表情作りの困難さなどに注意が必要です。飲み物はストローを使う、目は人工涙液や保護テープでケアするなどの対策が効果的です。また、無理に顔の筋肉を動かすことは避け、周囲に症状を理解してもらうことが大切です。

5-2. 顔面神経麻痺の患者への専門的サポート

顔面神経麻痺の患者には、耳鼻咽喉科・頭頸部外科での正確な診断と治療計画が重要です。治療にはステロイド薬や抗ウイルス薬の投与、リハビリテーションが含まれます。リハビリテーションでは、顔の筋肉運動指導やマッサージが行われ、患者の日常生活の質の向上を目指します。専門家のサポートと患者の努力が、治療の鍵となります。

 

記事執筆者

池袋ながとも耳鼻咽喉科
院長 長友孝文
日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会 専門医    


医院情報


医院名  池袋ながとも耳鼻咽喉科


所在地  〒170-0012 
      豊島区上池袋4-29-9  北池テラス4階


電話番号 03-6903-4187 


診療科目 耳鼻咽喉科 / 小児耳鼻咽喉科 / アレルギー科


 

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