副鼻腔炎の原因と症状、治療のポイントを解説!
まずお伝えしたいこと
- 風邪のあとに1週間以上悪化する鼻症状や、いったん良くなってから再び悪くなる時は、受診をおすすめします。
- 鼻の内視鏡では、膿性鼻汁、鼻茸(ポリープ)、出血の有無を直接確認できます。
- 副鼻腔炎は一種類ではありません。急性・慢性、鼻茸の有無、アレルギーや喘息、歯や真菌の関与によって治療が変わります。
- 目の腫れや見えにくさ、強い頭痛、高熱を伴う場合は、早めの受診が必要です。
副鼻腔炎(蓄膿症)とは
鼻の入口からのどへ続く空気の通り道を「鼻腔」といいます。その周りの骨の中には、左右それぞれに上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞という空洞があり、これらをまとめて「副鼻腔」と呼びます。正常な副鼻腔は空気で満たされ、小さな通り道(自然口)で鼻腔とつながっています。
風邪のウイルスや細菌、アレルギーなどをきっかけに鼻の粘膜が腫れ、自然口がふさがると、副鼻腔の中の分泌物を外へ出しにくくなります。粘り気のある鼻水や膿がたまり、炎症が続いている状態が副鼻腔炎です。「蓄膿症」という呼び方もありますが、現在は副鼻腔炎と呼ぶのが一般的です。
急性副鼻腔炎
風邪に続いて急に発症し、多くは4週間以内の経過をとります。はじめはウイルス性のことが多く、必ずしも抗菌薬が必要なわけではありません。症状の強さ、続いた日数、いったん軽快してから再び悪くなったかなどをみて、細菌感染が疑われる場合に抗菌薬を検討します。
慢性副鼻腔炎
鼻づまり、鼻水、後鼻漏、嗅覚低下などが3か月以上続く状態です。一般に「蓄膿症」と言われてきた化膿性の副鼻腔炎だけでなく、鼻茸を伴うもの、好酸球性副鼻腔炎、真菌(カビ)が関係するもの、上の歯が原因となる歯性上顎洞炎などがあります。
好酸球性副鼻腔炎
両側の鼻に鼻茸ができやすく、強い鼻づまりや嗅覚障害、粘り気の強い鼻水がみられる、再発しやすいタイプの慢性副鼻腔炎です。気管支喘息や、鎮痛薬で喘息発作などが起こるアスピリン不耐症を伴うことがあります。重症例は指定難病の対象となる場合があります。
治療にはステロイド点鼻薬、必要に応じた短期間の内服薬、内視鏡下副鼻腔手術、生物学的製剤などがあります。診断や重症度によって治療が大きく変わるため、「においが戻らない」「鼻茸が繰り返す」という方は、一般的な副鼻腔炎と同じ治療を続けるだけでなく、病型を確認することが大切です。
副鼻腔炎の症状と原因
このような症状がみられます
- 黄色や緑色の粘り気のある鼻水
- 鼻づまり、息がしにくい
- 鼻水がのどに落ちる(後鼻漏)
- 咳や痰が長引く
- におい、味がわかりにくい
- 頬、上の歯、目の間、額の痛み
- 頭痛、頭が重い感じ
- 鼻水や息のにおいが気になる
「鼻水は前には出ないけれど、のどにずっと落ちる」「風邪は治ったのに咳だけ残る」「歯科では異常がないと言われたのに上の歯が痛む」という相談もよくあります。副鼻腔炎は、鼻水だけの病気ではありません。鼻の奥や副鼻腔の状態を確認すると原因がわかることがあります。
原因は一つとは限りません
急性副鼻腔炎の多くは風邪をきっかけに始まります。鼻の中の腫れが続くと換気と排泄が悪くなり、細菌感染が重なることがあります。アレルギー性鼻炎による粘膜の腫れ、鼻中隔弯曲など鼻の形、喫煙による刺激も、治りにくさや繰り返しに関係します。
片側だけに強い症状がある時は、虫歯や歯の治療が関係する歯性上顎洞炎、真菌による副鼻腔炎、まれに腫瘍なども考えます。片側だけの鼻づまりや悪臭のある鼻水、血の混じる鼻水が続く場合は、一度耳鼻咽喉科で確認してください。
アレルギー・喘息との関係
アレルギー性鼻炎があると、鼻の粘膜が腫れて副鼻腔の出口が狭くなり、副鼻腔炎を起こしやすくなることがあります。鼻づまりが薬でなかなか良くならない時は、副鼻腔炎を合併していないかを調べます。
鼻と気管支は一続きの気道です。特に好酸球性副鼻腔炎では、喘息を一緒に治療することが大切です。喘息のある方は受診時に必ずお伝えください。
受診の目安
風邪のはじめの鼻水は、数日で自然に軽くなることもあります。ただし、次のような経過では副鼻腔炎を考えて診察します。
- 鼻水、鼻づまり、頬の痛みなどが1週間以上続く、または悪化している
- いったん良くなったあとに、発熱や黄色い鼻水、痛みが再び強くなった
- においがしない、後鼻漏や咳が続く
- 同じような副鼻腔炎を何度も繰り返す
- 症状が3か月以上続いている
- 片側だけの鼻症状、悪臭、鼻出血が続く
早めの受診が必要な症状
副鼻腔は目や脳に近いため、まれですが炎症が周囲へ広がることがあります。次の症状がある場合は、当日中の受診を検討してください。診療時間外で症状が強い場合は、救急医療機関へ相談してください。
- まぶたや目の周りが腫れた、赤くなった
- 物が二重に見える、見えにくい、目を動かすと強く痛む
- 非常に強い頭痛、繰り返す嘔吐、意識がぼんやりする
- 高熱と強い顔面痛がある
当院で行う副鼻腔炎の検査
すべての方に同じ検査をするわけではありません。症状の経過、鼻の中の所見、治療への反応をみて、必要な検査を選びます。
- 症状と経過を聞きますいつから続いているか、風邪のあとか、片側か両側か、痛みや嗅覚低下、喘息・アレルギー・歯の治療歴などを確認します。
- 鼻の中を診察します鼻粘膜の腫れ、膿性鼻汁の場所、鼻茸の有無を確認し、必要に応じて鼻汁を吸引します。
- 必要な画像検査を選びます内視鏡で見えない副鼻腔の奥や、炎症の広がりをレントゲンやCTで確認します。
鼻の内視鏡検査
耳鼻咽喉科が最も得意とする検査の一つです。細い内視鏡で鼻の奥を観察し、副鼻腔から流れ出る膿性鼻汁、鼻茸、出血しやすい部分などを直接確認します。副鼻腔の出口が完全に閉じている時は、内視鏡だけでは判断できないため画像検査を組み合わせます。
鼻のレントゲン
正常な副鼻腔は空気が入っているため黒く写ります。粘膜が腫れたり膿がたまったりすると白く写り、左右差や炎症の有無を確認できます。短時間で撮影できる一方、細かな構造はCTほど詳しくはわかりません。
副鼻腔CT
CTでは、レントゲンより詳しく副鼻腔内部の状態を確認できます。どの副鼻腔に炎症があるか、鼻茸や粘膜の腫れ、歯との関係、真菌が疑われる所見、骨の状態などがわかります。症状が長引く時、片側だけの病変、手術を検討する時などに特に役立ちます。
当院のコーンビームCTは耳鼻咽喉科領域を撮影する装置で、一般的な医科用CTと比べて撮影範囲が限られ、放射線量を抑えて検査できます。必要性を判断したうえで撮影します。
副鼻腔炎の治療
副鼻腔炎の治療は、急性か慢性か、鼻茸があるか、アレルギーや喘息があるかによって変わります。薬を全部同じように使うのではなく、診察や検査でわかった病態に合わせます。
急性副鼻腔炎
発症初期はウイルス感染が中心のことが多いため、軽症で経過が短い場合は、鼻水を出しやすくする薬、鎮痛薬、鼻処置などで様子をみることがあります。症状が長引く、いったん良くなってから再び悪くなる、膿性鼻汁や痛みが強いなど、細菌感染が疑われる場合は抗菌薬を使います。年齢、重症度、アレルギー歴、これまでの抗菌薬使用などを考えて薬を選びます。
慢性副鼻腔炎
鼻茸のない慢性副鼻腔炎では、マクロライド系抗菌薬を少量で一定期間使うことがあります。これは単に「化膿止め」として使うのではなく、慢性的な炎症や粘液の状態を整える目的で行う治療です。すべての副鼻腔炎に同じように効くわけではないため、鼻茸や好酸球性炎症の有無を確認します。
症状に合わせて使う薬
鼻水を出しやすくする薬
カルボシステインなどは、粘り気の強い鼻水を出しやすくし、鼻や副鼻腔の粘膜の働きを整える目的で使用します。
ステロイド点鼻薬
鼻の粘膜の炎症を抑える薬です。アレルギー性鼻炎を合併している場合や、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎でよく使います。血管収縮薬の点鼻とは種類が異なり、医師の指示どおりに使えば長期治療にも用いられます。
抗アレルギー薬・ロイコトリエン受容体拮抗薬
アレルギー性鼻炎や喘息を伴う場合に検討します。鼻の炎症を抑え、鼻づまりなどを改善する目的で使います。
漢方薬
症状や体質によって、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯、葛根湯加川芎辛夷などを使うことがあります。市販薬の「チクナイン」の主成分は辛夷清肺湯です。ほかの薬との組み合わせや持病も含めて選びます。
鼻処置・ネブライザー療法
診察時には、腫れた鼻の粘膜を収縮させて副鼻腔の入口を広げ、たまった鼻汁を吸引します。ネブライザーは薬液を細かな霧にして鼻へ届ける治療です。鼻の奥にたまった鼻汁を先に取り除くことで、薬が届きやすい状態にします。
鼻うがい
鼻うがいで、手術をしていない副鼻腔の奥まで直接洗うことはできませんが、鼻の中にたまった粘り気のある鼻水、膿性鼻汁、かさぶたを洗い流し、排泄しやすい状態をつくるのに役立ちます。当院では、副鼻腔炎を繰り返す方の普段のケアとしてもおすすめしています。
器具の選び方や安全な手順をまとめています 鼻うがいの正しいやり方を見る手術治療(当院では行っていません)
薬や鼻処置を続けても改善しない慢性副鼻腔炎、鼻茸が大きい場合、真菌や歯が原因となる場合などでは、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)を検討します。鼻の穴から内視鏡を入れ、鼻茸を取り除き、副鼻腔と鼻腔の通り道を広げて、換気と排泄を改善する手術です。
当院では手術を行っていません。診察とCTなどで手術が必要と判断した場合は、病状やご希望に合わせて手術可能な医療機関へ紹介します。
好酸球性副鼻腔炎の治療
好酸球性副鼻腔炎は再発しやすく、一般的な化膿性副鼻腔炎とは治療の考え方が異なります。ステロイド点鼻薬、必要に応じた短期間の内服、手術、さらに既存治療で十分にコントロールできない重症例では生物学的製剤を検討します。喘息がある方は、呼吸器内科などと連携して治療します。
繰り返さないための日常の管理
副鼻腔炎は薬だけでなく、鼻の状態を悪くする原因を減らすことも大切です。当院では、次のことを外来でお話ししています。
- 鼻うがい:粘り気のある鼻水や付着物を洗い流し、鼻の中を清潔に保ちます。
- 風邪を繰り返さない工夫:手洗い、うがい、十分な睡眠、人混みでの感染対策など、できる範囲で続けます。
- アレルギー性鼻炎の治療:鼻粘膜の腫れを放置せず、鼻の通り道を保ちます。
- 禁煙:たばこの煙は鼻粘膜の働きを弱らせ、炎症を長引かせます。
- 乾燥を避ける:鼻水が固まって排泄しにくくならないよう、加湿と水分補給を心がけます。
- 鼻を強くかまない:片側ずつ、ゆっくりやさしくかみます。強くかむと耳に負担がかかります。
お子さんの副鼻腔炎
子どもの副鼻腔は成長とともに発達します。小さなお子さんでも、風邪をきっかけに副鼻腔炎を起こすことがあります。大人より鼻の通り道が狭く、風邪を繰り返しやすいことに加えて、アデノイドやアレルギー性鼻炎が影響することもあります。
黄色い鼻水が長引く、夜や朝方の咳が続く、口呼吸やいびきが増えた、においがわかりにくそう、という時はご相談ください。鼻の奥と耳をつなぐ耳管も短いため、中耳炎を一緒に起こしていないか耳も確認します。
治療は症状と経過に合わせます。鼻水が黄色いという理由だけで、すべて抗菌薬が必要になるわけではありません。診察所見や重症度をみて、鼻処置、鼻水を出しやすくする薬、アレルギーの治療、必要な場合の抗菌薬などを選びます。
副鼻腔炎だけであれば、通常は通園・通学を休む必要はありません。発熱や体調不良がある時は無理をせず休みましょう。黄色い鼻水や強い鼻づまりがある急性期は、プールで悪化することがあるため控えるようにお話ししています。
副鼻腔炎についてよくある質問
副鼻腔炎は自然に治りますか?
風邪に伴う軽い急性副鼻腔炎は自然に軽快することがあります。ただし、1週間以上続いて悪化する、いったん良くなってから再び悪くなる、強い顔面痛や発熱がある場合は受診してください。3か月以上続く症状は慢性副鼻腔炎として原因を調べます。
黄色い鼻水なら抗生物質が必要ですか?
鼻水の色だけでは決まりません。風邪でも黄色い鼻水になることがあります。症状の続いた日数、痛みや発熱、いったん軽快してからの再悪化、鼻の所見などを合わせて細菌感染を判断します。
どれくらいで治りますか?
急性副鼻腔炎は多くが数週間以内に改善します。慢性副鼻腔炎は病型によって数か月の治療が必要になることがあります。鼻茸、好酸球性炎症、歯や真菌の関与がある場合は、さらに治療方針が変わります。
放っておくとどうなりますか?
自然に良くなる急性例もありますが、炎症が続くと慢性化し、嗅覚低下や鼻茸の原因になることがあります。まれに目や頭の中へ炎症が広がることもあります。目の腫れ、見えにくさ、強い頭痛がある時は早めに受診してください。
レントゲンとCTは両方必要ですか?
全員に両方行うわけではありません。症状と内視鏡所見から必要な検査を選びます。CTは長引く症状、片側性の病変、歯や真菌の関与、手術の検討など、詳しい確認が必要な時に役立ちます。
鼻が悪いと中耳炎になりやすいですか?
特にお子さんでは、鼻の奥と耳をつなぐ耳管が短く、鼻やのどの炎症に伴って中耳炎を起こしやすくなります。鼻水に加えて耳の痛み、聞こえにくさ、耳をよく触る様子があれば、耳も確認します。
自分でできることはありますか?
鼻うがい、やさしい鼻かみ、禁煙、加湿、十分な睡眠、アレルギー性鼻炎の管理が役立ちます。鼻うがいは治療の代わりではありませんが、鼻汁を洗い流して排泄しやすい状態をつくります。
副鼻腔炎は遺伝しますか?
一般的な急性副鼻腔炎そのものが遺伝するわけではありません。ただし、アレルギー体質、喘息、鼻の形など、なりやすさに関係する要素には家族内で似るものがあります。
関連するページ
鼻の症状が長引く時は、鼻の奥まで確認しましょう
副鼻腔炎は、症状だけでは急性・慢性や病型を判断しにくい病気です。当院では内視鏡、レントゲン、CTを使い分け、画像を一緒に見ながら現在の状態と治療方針を説明します。
WEB予約はこちら