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扁桃炎の全知識!原因から治療まで

扁桃炎とは

扁桃炎(へんとうえん)は、「喉の痛みが強い」という特徴を持つ病気です。喉の奥の左右にある口蓋扁桃(こうがいへんとう)にウイルスや細菌が感染して炎症を起こすことにより、高熱や喉の腫れ・赤み・痛みなどが現れます。

扁桃炎は免疫機能の発達過程にある幼児~学童期のお子さんの発症が多いですが、大人でも過労・ストレスなどで免疫力が落ちているときには、発症しやすくなります。

扁桃の炎症がひどくなると、扁桃の周りの粘膜まで腫れる「扁桃周囲炎」、さらに進行すると、深部に膿が溜まる「扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)」へ進行して、外科的治療(穿刺・切開)が必要となる上、溶連菌感染が原因の場合には「リウマチ熱」「急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)」などの厄介な合併症を引き起こすこともあるので、扁桃炎はできるだけ早く治療を開始し、しっかり最後まで治療することが重要です。

「高熱が出ている」「喉が赤く腫れている」「喉の痛みが強い」場合には、早めに耳鼻科を受診してください。

扁桃(扁桃腺)の働き

(図)扁桃の位置

扁桃は、喉の奥の口蓋垂(こうがいすい)、いわゆる「のどちんこ」の左右にあるアーモンド形のリンパ組織です。正式名称は口蓋扁桃です。口の中に入ってきたウイルスや細菌などの病原体から身体を守る「免疫」の働きをしています。扁桃腺は、口や鼻から入ってくる細菌やウイルスを感知し、それらを攻撃するための免疫細胞を作り出します。これらの免疫細胞は、体内の他の部位やリンパ節と密接に連携して、病原体を攻撃・排除し、感染症の広がりを制御する役割を果たしています。

一方で、扁桃には元から溶連菌や肺炎球菌、黄色ブドウ球菌など様々な細菌(=常在菌)が存在しています。免疫機能が正常に働いていれば、常在菌が悪さをすることはありませんが、免疫機能が低下すると常在菌が増殖して炎症が起こり「扁桃炎」を発症します。

扁桃炎の種類

扁桃炎には、急に発症する「急性扁桃炎」と、扁桃炎を繰り返して扁桃の炎症が慢性化した状態となる「慢性扁桃炎」の2種類があります。急性扁桃炎を繰り返す場合は「反復性扁桃炎」と定義されています。慢性扁桃炎の一部で、他の臓器にも影響を与える「扁桃病巣感染症」という特殊な病態が存在します。

 

<扁桃病巣疾患とは?>
扁桃病巣感染症とは扁桃腺(扁桃)の免疫学的異常が原因となり、他の臓器(皮膚、関節、腎臓など)に違った病気を起こすことを言います。扁桃腺自体はほとんど無症状か、軽い痛みや違和感がある程度です。具体的には、IgA腎症、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、胸肋鎖骨過形成症(きょうろくさこつかけいせいしょう)などがあり、扁桃摘出術が有効なことが多いです。

 

扁桃炎の症状

急性扁桃炎の症状

一般的に「扁桃炎」と言うと、急性扁桃炎を意味します。

急性扁桃炎の初期段階では、風邪に似た症状が現れ、区別が付きにくい傾向もありますが、一般的な風邪との違いは、「喉の痛みが強い」「鼻水はほとんど出ない」ことです。

  • 喉の赤み・腫れ・痛み

※炎症が進行すると、飲み込むときの痛みが増していく

  • 38~40℃の高熱

※2~7日程度続く。

  • 倦怠感(だるい感じ)
  • 悪寒がする(体がゾクゾクする病的な寒気)
  • 食欲不振

※お子さんの場合、喉の痛みから水分補給が難しくなり、脱水症状を引き起こして重症化することがあります。お早めにご来院ください。

  • 首のリンパ節の腫れ
  • 耳の痛み
  • 頭痛、関節痛
  • 扁桃に白い斑点のような膿が付く

(画像)急性扁桃炎

なお、原因菌が「溶連菌」の場合は、喉の痛みや発熱に続いて次のような症状が現れます。

  • いちご舌(舌に真っ赤なブツブツができる)
  • 赤い発疹

 

<手術や入院が必要なことも!扁桃周囲膿瘍とは?>

扁桃周囲膿瘍とは、扁桃炎をこじらせ、扁桃の周りに膿が溜まってしまう(=膿瘍)病気です。お子さんの発症は少なく、20代30代の男性に多くみられます。膿瘍の形成位置によっては、気道(空気の通り道)を圧迫して呼吸苦を生じ、さらに炎症が進行すると、膿瘍が首の深いところ(頸部膿瘍)や肺の間(縦隔膿瘍)にまで広がり、最悪の場合には命を落とす可能性もあります。

扁桃炎が持続して、食事を食べられないほどののどの強い痛み、口が開きにくくなる症状が出たときは要注意です。

膿を排出する治療が必要となるため、すみやかに耳鼻咽喉科をご受診ください。

また、再発しやすい傾向があり、再発を繰り返す場合には、入院して扁桃を摘出する手術(扁桃摘出術)が検討されます。

【原因】主に溶連菌やブドウ球菌などの細菌が過剰に増殖して、扁桃の炎症(扁桃炎)がさらにひどくなって周囲に広がります。

【症状】扁桃炎と同じような症状ですが、症状は強くなり、さらに次のような喉・口に関する症状も増えてきます。

  • 喉の症状は片側(膿瘍がある方)に集中する。
  • 痛みを軽減するため、膿瘍のある方に頭を傾けることが多くなります。
  • 飲み込むときに激しい痛みを伴う・唾を飲み込みにくくなる。
  • 喉が異常に腫れます。
  • 急に口臭がひどくなる
  • 声がこもる
  • 耳に痛みが出てくる
  • 口を開きにくくなる(開口障害)

【治療】抗菌薬投与と並行して、外科的治療(膿瘍への穿刺・切開)による排膿が必要です。

炎症により喉がひどく腫れて呼吸苦となっている場合には、気管切開などによる気道確保も必要となります。

※外科的治療が必要と判断された場合には、対応病院をご紹介させていただきます。

(画像引用)扁桃周囲膿瘍|日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=22

 

慢性扁桃炎の症状

慢性扁桃炎は大人の発症が多く、急性扁桃炎と比べて症状は軽い傾向があります。疲れ・睡眠不足などによる抵抗力の低下や、喫煙・飲酒など喉への刺激がきっかけで発症し、喉の痛み、異物感(喉がイガイガする)といった症状が現れます。咳・微熱が出たり、扁桃表面に膿ができたときには口臭を伴ったりすることもあります。

扁桃炎の原因

扁桃炎を引き起こす直接の原因は、扁桃に対する細菌・ウイルス感染です。本来、扁桃は免疫の働きを担っており、細菌・ウイルスなどの体内への侵入・増殖を防いでいますが、免疫力(抵抗力)が低下すると、病原体の感染力に負けて発症します。

免疫力の低下を招く要因

免疫力の低下を招く主な要因として、次のようなものがあるので、注意が必要です。

  • ストレス
  • 過労
  • 睡眠不足
  • 外気温の寒暖差
  • アレルギー
  • 風邪
  • 喉の乾燥
  • 喫煙
  • 外傷

 

扁桃炎の主な病原体と感染経路

扁桃炎を引き起こすウイルス・細菌および感染経路には、以下のようなものがあります。

  • 原因となる病原体
    • 細菌

溶連菌・ブドウ球菌・インフルエンザ菌・肺炎球菌など

  • ウイルス

ライノウイルス・アデノウイルス・RSウイルス・EBウイルス・単純ヘルペスウイルスなど

  • 感染経路
    • 飛沫感染(ひまつかんせん)

保菌者の咳・しゃみなどに含まれる病原体を吸って感染すること。

  • 接触感染

病原体の付いたドアノブ・手すりなどを触った手で、自分の口や鼻を触って感染すること。

  • 経口感染

手に付いた病原体が調理中の食品に付いてしまい、その食品を口に入れて感染すること。

<注意が必要!溶連菌感染>
特に注意したいのが通称「溶連菌」と呼ばれる「A群β溶血性レンサ球菌」です。溶連菌は、健康な人の喉・皮膚などにも存在する常在菌のひとつですが、感染すると侵入した部位によって、様々な合併症(続発症)を引き起こすことが知られています。

代表的な合併症には中耳炎・伝染性膿痂疹(とびひ)・肺炎・髄膜炎のほか、治療が遅れると意識障害・ショック状態を起こす「リウマチ熱」や、急激な腎機能低下を起こす「急性糸球体腎炎」などがあります。

扁桃炎の検査・診断法

扁桃炎では、一般的に臨床症状や扁桃の状態を問診・視診などから確認して、診断します。

また、必要に応じて、ウイルス・細菌の迅速検査、血液検査・尿検査・細菌培養検査などを行うことがあります。

 

  • 問診・視診・触診

自覚症状のほか、扁桃の炎症を繰り返していないか、扁桃の炎症が他の部位に広がっていないかなど詳しく確認します。また、喉の炎症状態の視診や首のリンパ節の触診を行います。食事が取れないぐらい喉の痛みが強いときは、内視鏡で喉の奥の腫れを確認することがあります。当院で使用する内視鏡は世界でも細径クラスなので、痛みや刺激はほとんどありません。

(画像)当院で使用しているOLYMPUS製の内視鏡

  • 溶連菌迅速検査

   患者さんの年齢や症状などから、溶連菌感染が疑われる場合に行う検査で、綿棒で喉をこすって調べることができ、5分程度で結果が分かります。

インフルエンザ検査など、他の検査との同時実施が可能です。

  • 血液検査

白血球の増加や炎症の程度をみるCRP値などを確認します。(当日に結果は出ません)

  • 細菌培養検査

   綿棒で扁桃をぬぐった液を培養して細菌の種類を調べます。症状が長引いているときに菌の種類を特定して、効果のある抗生物質を調べる目的で行う場合があります。

 

扁桃炎の治療

扁桃炎の治療は「薬物療法」を中心に進めていくと同時に、十分な休養も必要です。

きちんと治療して完治させ、慢性化を防ぎましょう。

薬物療法

急性扁桃炎では、原因がウイルスであれば薬で症状を和らげる「対症療法」、細菌であれば「抗菌剤+対症療法」にて治療を行います。

 

ウイルス性の場合

  • 喉の消毒(うがい薬)
  • 解熱剤
  • 消炎鎮痛剤(非ステロイド)

※基本的には「内服薬」を処方しますが、高熱時・喉の痛みが強いときなど薬の服用が難しいケースでは「坐薬」を処方することもあります。

 

細菌性の場合

  • 抗菌剤(抗生物質ペニシリン系)

   ※原因が細菌の場合のみ使用。基本的に内服ですが、食事が取れないなど重症時は点滴で対応します。

 

<抗菌剤(抗生物質)の服用ポイント>

 抗生物質を服用すると、つらい症状は約3~4日で緩和されます。しかし、その段階では身体の中の細菌は死滅しておらず、体内に残っています。特に溶連菌の場合は、途中で服用を中止してしまうと、扁桃炎が治ってから2~3週間後に「リウマチ熱」「急性糸球体腎炎」などの合併症が引き起こされる可能性があります。処方された抗生物質は、最後までしっかり飲みきりましょう。

  • 喉の消毒(うがい薬)
  • 解熱剤
  • 消炎鎮痛剤

外科的治療(手術)について  ※当院では施行できませんので、病院を紹介させていただきます

扁桃の炎症がひどく、膿瘍に進行している場合や、年に何回も扁桃炎を繰り返したりする場合には、外科的治療(口蓋扁桃摘出術)を行います。

  • 穿刺・切開による排膿処置

扁桃周囲の炎症が強く、扁桃に白っぽい膿が溜まる「扁桃周囲膿瘍」に進展している場合には、扁桃を切開したり針で刺したりして、膿を出す処置を行います。この処置は当院で可能です。

  • 口蓋扁桃摘出術(いわゆる扁桃腺の手術のこと)

扁桃炎が年に3~4回以上再発する場合には、薬物療法だけでは改善が難しく、日常生活への影響も多くなるため、扁桃を取り除く手術を行います。

通常は全身麻酔の手術となり、施設によりますが5~7日程度の入院が必要です。

一般に下記のような状態に該当する方は手術を行います。

◯扁桃炎を反復する方(年3~4回以上)

◯扁桃炎になると内服では改善せず,点滴に至る方

◯炎症が周囲に波及し,扁桃周囲膿瘍や,扁桃周囲炎を起こしてしまう方

◯いびきが大きく,無呼吸になる方(これは扁桃炎ではなくても適応になります)

最終的に摘出した方が良いかどうかを決めるのは医師の意見というよりも、『扁桃炎が本人の生活の質にどれほどの影響を及ぼしているか』です。年に1、2回しか扁桃炎を発症しなくても、その1、2回が仕事や生活に多大な悪影響を及ぼし、ご本人が摘出してしまいたいと考えれば手術適応だと考えています。(年1、2回しか起こさないから取らなくてもよいと、という先生は当然いらっしゃるとは思います)

お子さんの場合は免疫機能を扁桃に頼っている部分があるため、手術については担当医と相談が必要ですが、個人的には5歳以上ならメリットが大きければ切除しても良いと考えています。(睡眠時無呼吸症候群などの治療のために必要であれば、5歳以下でも切除します)

身体全体の免疫機能が完成する小学校高学年以降では、扁桃の役割はほとんどなくなるため、切除しても大きな問題はありません。

 

よくあるご質問

1)扁桃炎は他人にうつりますか?

扁桃炎は感染症のひとつです。主に感染者の咳・くしゃみなどの飛沫(=しぶき)、飛沫の付いたおもちゃを触る、一緒のお皿・お箸・コップを使って食事をするなどによって、他の人にうつります。

特にお子さんの溶連菌感染から、兄弟・姉妹、親子でうつしてしまうケースが多くみられます。感染力が特に強い急性期まで(抗菌薬の服用から約24時間後)は、念のため「マスクをする」「一緒に遊ぶのを控える」「おもちゃ・タオルの共用などを避ける」など予防すると良いでしょう。

 

2)溶連菌感染による扁桃炎を予防する方法はありますか?

溶連菌を予防するワクチンは、今のところありません。

風邪など他の感染症と同様に、免疫力低下や喉の乾燥を防ぐ対策が大切です。

  • こまめにうがい・手洗いをする
  • 規則正しい生活を送る

栄養バランスの取れた食事・十分な睡眠・適宜ストレス発散しましょう。

  • 部屋の湿度を40~70%に保つ

乾燥しているときは加湿器などの使用がおすすめです。

  • 禁煙

喫煙による喉への刺激は粘膜のバリア機能を弱め、細菌・ウイルスの増殖リスクを高めます。

  • 人混みを避ける
  • こまめに水分を摂る
  • マスクをする

菌・ウイルスの侵入を抑える以外に、喉への乾燥予防にもなります。

3)溶連菌による扁桃炎を発症しましたが、保育園・学校は出席停止となりますか?

溶連菌感染症は、学校保健安全法の出席停止となる疾患として、明確には定められていませんが、多くの地域で「第三種の感染症*1」として出席停止の措置が取られています。

*1第三種の感染症:学校で流行が起こった場合、その流行を防ぐために必要に応じて校長が学校医(園医)の意見を聞き、「第三種の感染症」として出席停止にできます。

(参考)登校に関する医師の証明書(区立小中学校・区立幼稚園)|豊島区

https://www.city.toshima.lg.jp/354/kosodate/gakko/sho-chu/gakkohoken/014726.html

溶連菌感染は抗生物質による治療開始後、24時間程度で感染力はなくなります。全身状態が良ければ、だいたい2日後には登校可能です。ただし、慢性化および合併症リスクを減らすために医師から処方された抗生物質は、症状が改善してきても指示に従って最後まで飲み切ることが大切です。

 

4)喉が痛くて、固形物が食べられません。どうすればよいでしょうか?

バナナ・お粥・プリン・アイスクリーム・茶碗蒸し・豆腐など喉越しの良いものや、機能性食品のゼリーなどを利用して栄養補給すると良いでしょう。また、麦茶・乳・スープなどの水分をこまめに摂って、脱水症状を予防しましょう。また、水分・食事が全く摂れないときには、当院で点滴などの処置を行いますので、お早めにご来院ください。

 

 

記事執筆者

池袋ながとも耳鼻咽喉科
院長 長友孝文
日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会 専門医    


医院情報


医院名  池袋ながとも耳鼻咽喉科


所在地  〒170-0012 
      豊島区上池袋4-29-9  北池テラス4階


電話番号 03-6903-4187 


診療科目 耳鼻咽喉科 / 小児耳鼻咽喉科 / アレルギー科


 

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