扁桃膿栓(におい玉・臭い玉)
扁桃膿栓(におい玉・臭い玉)とは
扁桃膿栓(へんとうのうせん)とは、喉の両側にある口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)の表面にたまる白または黄白色の小さな塊のことです 。俗に「におい玉」や「臭い玉」とも呼ばれ、その名の通り強い臭いを発する原因になります 。
扁桃の表面は滑らかではなく「扁桃陰窩(いんか)」と呼ばれる多数の小さなくぼみがあり、この陰窩に老廃物が蓄積したものが膿栓です 。膿栓の大きさは通常1~5mm程度(チーズのかたまりのような柔らかな塊)ですが、大きいものでは1cm以上になることもあります 。膿栓そのものは膿(うみ)の栓という字の通り、免疫反応で出た膿状の物質が固まったもので、正式な病名ではありません(病気というより生理現象に近い存在です)。
そのため健康な人でも生じうるものであり、誰にでもできる可能性があります 。
膿栓の中身は、剥がれ落ちた粘膜や死んだ免疫細胞、細菌・ウイルスの死骸、食べかす、唾液中のたんぱく質などが凝縮・塊状化したものです 。
扁桃は体内に侵入する細菌やウイルスと戦うリンパ組織であり、その戦いの結果生じた老廃物が扁桃の陰窩に溜まって塊になるのです 。膿栓にはカルシウムやリンなどのミネラル成分も沈着するため、時間とともに硬くなる場合もあります 。
膿栓1個の中には数億個もの細菌が存在するとされ、砕くと硫化水素やメチルメルカプタン、スカトールといった強烈な悪臭ガスが発生します 。実際に膿栓を潰すと下水やドブのような臭いが広がるため、これが「臭い玉」の由来になっています 。なお、膿栓は基本的に良性で無害なものであり、誤って飲み込んでしまっても胃酸で分解されるため体に害はありません 。
主な原因とできやすい人の特徴
扁桃膿栓ができる直接の原因は前述のとおり、扁桃の陰窩に老廃物が蓄積することです。しかし、誰にでも起こりうる現象である一方、できやすい人とそうでない人がいるのも事実です 。
以下に膿栓ができやすくなる要因や、できやすい人の特徴を整理します。
口腔内の環境(不衛生や乾燥)
お口の中の衛生状態が悪かったり、唾液が少なく乾燥しがちな人は膿栓ができやすくなります 。歯磨き不足で歯垢や舌苔(ぜったい)が多かったり、唾液の自浄作用が低下すると細菌が繁殖し、膿栓の材料となる細菌の死骸や粘膜カスが増えるためです 。特にドライマウス(口腔乾燥症)の人は、唾液分泌が少ないことで口腔内が細菌繁殖しやすい環境になり、膿栓形成のリスクが高まります 。
口呼吸の習慣や鼻炎
鼻づまりやアレルギー性鼻炎で口呼吸になっている人も膿栓ができやすい傾向があります 。口呼吸だと空気中の細菌やウイルスが直接口腔内に入り込み喉に付着しやすく、さらに口が開いていることで喉や口が乾燥して細菌が増えやすくなるためです 。また、鼻炎により鼻水(粘液)が喉に落ちてくる後鼻漏(こうびろう)の状態では、粘液中の菌が扁桃に付着して膿栓形成につながります 。実際、慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)や上咽頭炎で常に喉に粘液が流れている人は膿栓を繰り返しやすいとされています。
扁桃炎を繰り返す人
扁桃自体の炎症(扁桃炎)を慢性的に繰り返している人は膿栓ができやすくなります 。扁桃炎になると扁桃組織で膿が生じますが、炎症が長引いたり慢性化すると、その膿や壊死組織が陰窩に溜まって膿栓を形成しやすくなるからです 。慢性扁桃炎の患者さんでは扁桃自体が肥大し陰窩も深くなるため、膿栓の「溜まり場」が大きくなることも一因です。
特に疲労やストレスで抵抗力が落ちているときに扁桃炎を起こし、そのたびに膿栓ができるケースもあります。
その他の要因
加齢により唾液分泌が減少することや、糖尿病・腎疾患・シェーグレン症候群などによる慢性的な口渇(こうかつ)も膿栓の形成リスクを高めます 。
また、一部の薬剤(抗ヒスタミン薬や抗うつ薬など)の副作用で唾液が減る場合や、緊張・ストレスで口が渇くことも膿栓ができやすくなる要因です 。逆に、定期的に歯科受診して口腔ケアが行き届いている人や唾液が多く潤っている人では、膿栓が目立つほど大きくなることは比較的少ない傾向があります 。
膿栓は「お口の不潔が原因」と単純に言い切れるものではありません。実際には健康で清潔にしている人でも膿栓はできます 。口腔内を清潔に保つことや唾液をよく出す生活習慣は膿栓予防に有効ですが、完全に防ぐことは難しいのが現状です 。
例えば「食べカスが原因だから食後にうがいすれば防げる」というものでもなく、陰窩に蓄積する老廃物は生理的に常に産生されるため、できるときはできてしまいます 。ただし上述のような口呼吸や慢性鼻炎・扁桃炎、口腔の乾燥などは膿栓が繰り返し大きくなる誘因となるため、心当たりがあれば後述する予防策で対処すると良いでしょう。
膿栓による症状 – 口臭や喉の違和感など
膿栓そのものは病気ではありませんが、大きくなったり蓄積すると様々な不快症状を引き起こすことがあります。
口臭(息の臭い)
膿栓は強烈な悪臭物質を含むため、口臭の原因になります 。特に膿栓が潰れたときに臭いガスが放出され、周囲にもわかるほどの口臭が発生することがあります 。
実際、膿栓が原因で口が臭う人もいますが、膿栓が常に口臭を生むわけではありません 。膿栓が扁桃に収まっている間は臭いが閉じ込められており、必ずしも強い口臭にはつながらないからです 。とはいえ膿栓を潰すと一気に嫌な臭いが広がるため、口臭が気になる人にとって膿栓は非常に不安要素になります。事実、「自分の口臭の原因はこの臭い玉では?」と心配する人も多いです。
喉の違和感・異物感
膿栓が喉(扁桃)にあると、喉に何か引っかかっているような違和感を覚えることがあります 。特に飲み込む動作のときに引っかかる感じやチクチクした刺激を感じる場合があります。また、大きめの膿栓があると常に喉の奥に異物があるような不快感が続くこともあります 。
このため「喉がイガイガする」「喉に何か詰まっている気がする」といった症状で耳鼻咽喉科を受診し、膿栓が見つかるケースも少なくありません 。実際には扁桃に白い塊が付着していても、口を「あー」と開けただけでは見えにくい位置にあることが多く、専門医が前口蓋弓(ぜんこうがいきゅう)という扁桃の前のヒダを押し広げて診ないと発見できないこともあります 。
そのため、患者さん自身は原因に気づかず漠然とした違和感だけ感じている場合もあります。
咳や嚥下時の異常
膿栓がゆるんでいるときや、複数あるときは、咳やクシャミと一緒に飛び出すことがあります 。突然口の中に嫌な臭いの白い塊が出てきて驚くケースですが、これは膿栓が外れた瞬間です。嚥下(飲み込み)の際にもふと喉から口内へ移動してくることがあり、その際に軽いむせや咳込みを誘発することもあります。
飛び出した膿栓は非常に臭うため、「何かの病気では?」と心配になるかもしれませんが、膿栓とわかれば過度に心配する必要はありません。
その他の症状
大きな膿栓や慢性扁桃炎に伴う膿栓の場合、喉の痛みや発熱を伴うこともあります。ただしこれは膿栓そのものの症状というより、背景にある扁桃炎の症状です。
膿栓単独では痛みなどの炎症症状は基本的に引き起こしません。また、膿栓による口臭や異物感から人前で話すのが憂鬱になる、気分的に落ち込むといった生活の質(QOL)の低下が見られることもあります 。特に口臭への不安は対人関係に影響しかねないため、膿栓が気になる場合は早めに対処することが望ましいでしょう。
多くの場合、膿栓は自然に排出・消失しています 。実は喉にできた膿栓の多くは、私たちが気付かないうちに食事や唾液と一緒に飲み込まれていると考えられています 。そのため小さい膿栓は症状を自覚することなく処理されているのです。膿栓があるからといって必ずしも誰もが口臭や違和感を感じるわけではなく、症状がなければ無理に治療する必要はありません 。
膿栓のセルフチェック方法
扁桃膿栓があるかどうかは、以下のポイントでセルフチェックできます。
喉を目で確認する
鏡の前で大きく口を開け、明るい光を当てて喉の奥(両側の扁桃あたり)を観察します。白っぽい小さな塊が扁桃表面に見えれば膿栓の可能性が高いです 。
ただし前述のように、膿栓は奥まった陰窩に隠れて見えないことも多く、素人判断は難しい場合があります 。喉を「おえっ」とさせない程度に舌圧子や清潔な綿棒で舌を軽く押さえ、扁桃の周囲をそっと覗くと見つかることがあります(※無理は禁物です)。
におい玉が出た経験
咳やクシャミとともに過去に白い臭い塊が口に出てきたことがある人は、扁桃に膿栓ができやすいタイプと考えられます 。一度出たからといって常にあるとは限りません
が、繰り返し臭い玉が出る場合は陰窩に常に蓄膿している可能性が高いです。
口臭の有無
自分では判断しにくいですが、周囲から「口が臭う」と指摘されたり、自分で強い口臭に気付く場合、原因の一つとして膿栓が疑われます 。もちろん口臭の原因は多岐にわたるため断定
はできませんが、歯科や内科で原因が見当たらない慢性的な口臭がある場合、耳鼻咽喉科で膿栓の有無をチェックしてもらう価値があります。
以上のセルフチェックで膿栓が疑われる場合でも、症状がなければ経過観察で問題ないことも多いです。ただし強い口臭や喉の不快感がある場合は、次に述べる対処法を検討してください。
自力での除去は要注意!正しい膿栓の取り方膿栓に気付くと「自分で取りたい」と思う方もいるでしょう。しかし自力で膿栓を取る行為には注意が必要です 。
自分で取るのは危険?その理由
膿栓を無理に指や器具で取ろうとすると、以下のようなリスクがあります。
喉や扁桃を傷つける
綿棒やピンセット、爪楊枝などで扁桃をいじると、デリケートな粘膜を傷つけ出血したり炎症を起こす恐れがあります 。金属や硬いものが少し引っかかっただけでも組織を
傷つける可能性があり、かえって細菌感染を招いたり悪化する危険があります 。
かえって口臭悪化・再発
仮に自分で膿栓を取れても、膿栓を潰してしまうと強烈な臭いが口の中に充満し、一時的に口臭が酷くなることがあります 。さらに潰れた膿栓の破片が他の陰窩に入り込んでしまうと、新たな膿栓形成を助長する可能性も指摘されています 。つまり自己除去は根本的な解決にならず, 下手をすると状況を悪化させかねません 。
強い嘔吐反射喉に指や器具を入れると強い咽頭反射(オエッという吐き気)が起こります 。人によっては嘔吐してしまうこともあり危険です。特に食後すぐは吐いてしまう可能性が高いので絶対にやめましょう 。
安全なセルフケア方法
とはいえ、「臭い玉が見えていてどうしても取りたい」という場合もあるでしょう。その際は、なるべく喉を傷つけず安全に行える方法を試してください。
うがいで洗い流す
最も簡単で安全な方法は濃い目のうがいです 。コップ一杯の水または洗口液を口に含み、上を向いて喉の奥でガラガラとうがいをします(15秒程度を2回繰り返す) 。
勢いよく喉をゆすぐことで、表面付近の膿栓であれば外れることがあります 。市販のうがい薬を使う場合は、殺菌・抗炎症成分入りのものが効果的ですが、アレルギーのある方は注意してください 。緑茶に含まれるカテキンにも殺菌作用があるため、お茶でうがいするのも一法です 。
ハンディ洗浄ボトルを使用する
市販のハンディ・クラウンなどの丸型洗浄瓶(ノズル付きの給水ボトル)を使い、水圧で膿栓を洗い出す方法もあります 。ボトルに水を満たし、鏡で膿栓の位置を確認しながらノズルでその部分にやさしく水をかけます 。ピンポイントで水圧をかけることで陰窩にこびりついた膿栓が押し流されます 。力を入れすぎず、ぬるま湯で行うと刺激が少なく効果的です。専用の器具がない場合、イガイの容器やスポイトなどで代用する人もいます。ただし誤って水を飲み込んでむせないよう注意しましょう。
※注意: 綿棒で軽く触れてみてポロッと取れる場合もありますが、基本的には喉に器具を入れる行為自体がリスクです 。特に硬い器具(ピンセットや爪楊枝など)は厳禁です 。安全策としては「うがいまで」に留め、取れない場合は無理せず専門医に任せることをおすすめします 。
医療機関での治療法 – 洗浄・吸引から扁桃摘出まで
膿栓による口臭や喉の不快感が強い場合、また自力で除去できない大きな膿栓がある場合は、耳鼻咽喉科での治療を検討しましょう 。主な治療法は以下のとおりです。
専用器具による扁桃陰窩の洗浄
膿栓を洗い流すための専用の洗浄管を使用できます(耳鼻科でもどこでもできるわけではありません) 。
細い管の先を扁桃の陰窩に当て、適度な水圧で生理食塩水などを噴出させて膿栓を洗い出す方法です 。うがいでは取れない奥の膿栓も除去可能です。「多少の苦痛を伴いますが、膿栓がすっきり取れて違和感と臭いが改善される」とされ、多くの場合この処置だけで症状は大きく軽減します 。
ただし、完全に除去することは困難ですので、溜まりやすい方は時間が経つと再度溜まってくることも多いです。
陰圧吸引(バキューム)による除去
洗浄だけで不十分な場合、ガラス製の吸引管で膿栓を吸い取る方法も用いられます 。吸引管で陰窩内の膿栓を直接吸い上げることで、頑固に張り付いた塊も取り除けます 。洗浄と吸引を組み合わせることで、肉眼で見えない隠れた膿栓もとることが可能です。処置は短時間で終わります 。
扁桃陰窩の凝固・焼灼処置(※当院ではできません)
何度も膿栓を繰り返して困る場合、扁桃の膿栓が溜まるくぼみ(陰窩)自体を小さくする処置が選択されることがあります 。
高周波電気凝固装置やレーザー等で陰窩を焼灼(しょうしゃく)し、膿栓が溜まるポケットを潰してしまう方法です 。これにより膿栓が溜まりにくくなる効果が期待できます 。局所麻酔下で日帰り可能な治療ですが、処置後しばらく喉の痛みが続くことがあります。陰窩凝固術は比較的新しい治療法で、対応している医療機関が限られますが、膿栓の慢性症状に悩む方には有効な選択肢です。
扁桃摘出手術(※当院ではできません)
根本的に膿栓の問題を解決するには、扁桃そのものを摘出してしまう方法があります 。扁桃を手術で取れば陰窩ごと無くなるため、以後膿栓はできなくなります。
ただし扁桃摘出術は全身麻酔で数日間の入院が必要な比較的大きな手術です。出血などの合併症リスクもあるため、通常は膿栓だけを理由に手術するケースは稀です 。
しかし、膿栓以外にも慢性扁桃炎による高熱を繰り返す場合や、膿栓が原因で重度の口臭・嚥下障害を起こす場合には、摘出が検討されることもあります 。
膿栓を繰り返す人のための予防策
膿栓は完全に防ぐのが難しいものの、日常生活の工夫でできにくくすることは可能です 。特に「膿栓体質」で繰り返し大きな膿栓ができる人は、以下の予防策を習慣にしましょう。
1. 口腔内を清潔に保つ(口腔ケアの徹底)
お口の中を常に清潔にし、細菌の繁殖を抑えることが膿栓予防の基本です 。毎日の歯磨きを丁寧に行い、歯と歯の間や舌苔もケアしましょう。デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで歯磨きだけでは落としきれない汚れを除去できます 。特に歯並びが悪い部分や奥歯の溝、歯茎の境目はプラークが残りやすいので注意が必要です 。舌ブラシで舌苔を落とすのも有効ですが、やりすぎて舌を傷つけないよう優しく行ってください。
また、定期的に歯科でクリーニングを受けることもおすすめです 。プロによる歯石除去や口腔清掃でお口の細菌数を減らせば、結果的に膿栓の材料も減ります 。歯周病や虫歯の治療も口臭・膿栓対策に重要です 。つまり口腔ケアを徹底し口腔内細菌を減らすことが、膿栓ができにくい環境づくりにつながるのです。
2. こまめに水分補給をする
唾液には食べかすや歯垢を洗い流し、細菌の繁殖を抑える自浄作用・抗菌作用があります 。したがって唾液が減って口腔内が乾燥すると膿栓はできやすくなります 。日頃から喉が渇く前に水分を摂る習慣をつけ、口の中を潤わせておきましょう 。特に起床時や長時間のデスクワーク中、食後、お風呂上がり、運動後などは意識して水を飲むようにしてください 。
水分補給の際は、利尿作用のあるカフェイン飲料(コーヒー・お茶)やアルコール飲料は避け、純粋な水や白湯などがおすすめです 。厚生労働省によると、成人男性(60kg)の1日必要水分量は約2.5L(うち飲料水として1.2L)とされています 。夏場や運動時はさらに多めに、水分は一気ではなく少量をこまめに摂取するのがポイントです 。十分な水分と潤いは、膿栓だけでなく口臭全般の予防にも役立ちます。
3. 鼻呼吸を心がける
口呼吸の人は先述のように膿栓ができやすくなります 。日中もできるだけ口を閉じて鼻で呼吸する習慣をつけましょう 。鼻毛や鼻粘膜にはフィルター機能があり、空気中の細菌やウイルスを捉えて喉に侵入するのを防いでくれます 。鼻呼吸に切り替えることで喉の乾燥も防げ、一石二鳥です 。
「自分が無意識に口呼吸になっていないか」確認することも大切です。口呼吸の人の特徴として「気付くと口が半開き」「朝起きるとのどが痛い」「唇が乾燥している」「いびきや歯ぎしりを指摘される」などがあります 。思い当たる人は、睡眠時に口閉じテープを使う、鼻炎があれば適切な治療を受けるなどして、できる限り鼻呼吸に改善しましょう 。なお、歯並びや顎の形状が原因で口呼吸になっている場合もあるので、その場合は歯科矯正など専門的な相談が必要です 。
4. 喉・口を乾燥させない工夫(加湿・唾液の活用)
秋冬の乾燥する季節やエアコン使用時は、喉が乾燥しないよう室内の加湿を心がけましょう。就寝時に加湿器を使ったりマスクをして眠ることで、喉の乾燥を防げます。さらに唾液腺マッサージやよく噛む習慣で唾液の分泌を促すのも効果的です 。具体的には、耳下腺・顎下腺・舌下腺といった唾液腺のある箇所(耳たぶ下、顎の骨の内側、あご先の下など)を指の腹で適度に押したり揉んだりすると唾液がジワッと出てきます 。梅干しやレモンなど酸っぱいものを食べても唾液が出ますので、食事に酸味を取り入れるのも良いでしょう 。
また食事では歯ごたえのある食品をしっかり噛むことを意識してください 。ガムを噛む習慣も唾液分泌を促し、口腔内を潤す助けになります 。
なお、唾液にはさらさらした「漿液(しょうえき)性唾液」と粘り気の強い「粘液性唾液」があります 。リラックス時はさらさら唾液が多く、緊張ストレス時は粘ついた唾液になりがちです 。さらさら唾液が多いほど口内は潤い、粘ついた唾液が多いと口内は乾燥します 。ストレスを溜めず十分な休息を取ることも、良質な唾液のために重要です。
5. 定期的な喉うがい・鼻うがい
こまめなうがいも膿栓予防に有効です 。外出から帰った時や食後に、水や薄めたうがい薬で喉をしっかりゆすぎましょう 。うがいにより喉粘膜に付着した細菌・ウイルスを洗い流せます し、喉を潤す効果もあります 。手洗いを十分にした後でうがいすることも忘れないでください 。
また、鼻炎持ちで後鼻漏がある人は鼻うがいも検討してください。食塩水で鼻の中を洗浄すれば、鼻腔内の菌や埃を減らし膿栓の原因となる慢性的な粘液垂れを軽減できます。ただし鼻うがいは正しい方法で行わないと耳に水が入る恐れがあるため、専用の鼻洗浄器具やキットを使用し、手順を守って行いましょう。
よくある質問
膿栓は放置せず必ずとるべきでしょうか?
A. 症状がなければ無理に取る必要はありません。膿栓自体は病気ではなく、それ自体で健康に悪影響を及ぼすことは基本的にありません 。多くの場合は自然に飲み込まれて処理されます 。ただし、膿栓による口臭や喉の異物感など不快な症状がある場合は、放置せず対処した方が良いでしょう 。症状がつらいときは耳鼻咽喉科で安全に除去してもらえます 。膿栓を取れば臭いや違和感は一時的に改善しますが、またいずれ再発する可能性が高いことも知っておいてください 。根本的には前述の予防策で「できにくい口内環境」に整えることが大切です 。
膿栓は本当に口臭の原因になりますか?
A. なりますが、絶対ではありません。膿栓は潰れると強烈な臭いを発するため、一部では口臭の原因になります 。実際、「臭い玉がある=口が臭い」と心配する人もいます。しかし膿栓があるからといって常に口臭が出ているとは限りません 。膿栓から臭いが漏れるのは主に潰れた時であり、膿栓が扁桃に留まっている限りはそれほど強い臭いを発しない場合もあります 。
また、仮に膿栓が口臭に寄与していたとしてもそれだけが原因ではない可能性が高いです 。口臭の約8~9割は口腔内の他の要因(歯周病・舌苔・虫歯など)によるとも言われます 。膿栓を取っても口臭が続く場合、歯科や内科で他の原因を調べることが重要です 。逆に言えば、膿栓が多少あっても口腔ケアが行き届いていればそれほど口臭は感じないケースもあります。口臭が気になる方は膿栓だけにとらわれず、総合的な口臭対策に取り組みましょう 。
自分で膿栓を取ってもいいですか? 安全な取り方は?
A. 基本的におすすめできません。前述したように、自分で膿栓を無理に取ると喉を傷つけ感染のリスクがあります 。特にピンセットや硬い器具での除去は危険です 。安全な方法は強めのうがいや洗浄ボトルでの軽い水洗程度で、それでも取れない膿栓は専門医に任せるのが賢明です 。「目に見えていて簡単に取れそうだから…」と綿棒で取りたくなるかもしれませんが、それで運良く取れたとしても粘膜を傷つけたり臭いが広がったりするリスクがあります 。
膿栓ができやすいのはどんな人ですか?
A. 基本的に誰にでもできる可能性があります。健康な人でも免疫反応で膿栓は作られるため、生涯一度も「臭い玉」を経験しない人の方が少ないかもしれません 。ただし、繰り返し大きな膿栓ができる人には一定の傾向があります 。
例えば口内環境が悪かったり乾燥しやすい人、鼻炎持ちで後鼻漏がある人、慢性の扁桃炎がある人、口呼吸の癖がある人などは膿栓ができやすいです 。逆に口腔ケアが行き届いている人や唾液がよく出る人は膿栓が大きく育ちにくい傾向があります 。年齢的には高齢になるほど唾液が減って口が乾くため膿栓リスクは上がりますが、一方で若い人の方が扁桃が大きく免疫活動も盛んなため膿栓を自覚しやすいとも言えます。
膿栓を取ればもう二度とできませんか?
A. 残念ながら、またできます。膿栓は生きている限り扁桃で産生され続ける老廃物なので、一度除去しても時間が経てば再び溜まります 。特に根本的な生活習慣や環境を変えない限り、同じペースで蓄積するでしょう 。したがって「取って終わり」ではなく、再発前提での予防策(口腔環境の改善や生活習慣の工夫)が重要になります 。どうしても繰り返して嫌な場合は、扁桃摘出術という選択もありますが、リスクと負担が大きいため慎重な判断が必要です 。
以上、扁桃膿栓(におい玉・臭い玉)について原因から予防まで解説しました。膿栓そのものは心配しすぎる必要のないものですが、口臭や喉の違和感の原因となり得るため適切な対処が大切です 。まずは日々の口腔ケアや生活習慣を見直し、それでも悩むときは耳鼻咽喉科を受診してみましょう。