鼻水の吸引について
小さなお子さんが鼻水で苦しそうにしている姿を見るのは、親としてつらいものですよね。赤ちゃんや幼児は自分で上手に鼻をかむことができないため、鼻水が詰まると呼吸しにくくなったり、ミルクや食事がうまく摂れなくなったりします。
鼻水にはホコリやウイルスを体内に入れない、防御フィルターの役割がありますが、風邪や鼻炎で過剰に出た鼻水を放っておくと様々なトラブルの原因となります。そこで役立つのが「鼻水吸引」です。
鼻水吸引の必要性とその理由
医学的な背景:子どもの鼻水が出やすい理由
子どもは大人に比べて鼻の構造や機能が未発達なため、風邪などを引くと鼻水がたくさん出やすい傾向があります。鼻やその奥の副鼻腔(ふくびくう)は常に粘液を分泌しており、吸い込む空気を加湿・加温したり、異物や細菌・ウイルスが体内に入らないようキャッチする働きをしています。
しかし幼い子どもは自力で鼻をかむのが苦手なので、一度鼻水が増えると上手く排出できず鼻に溜まりがちです。また、鼻腔自体も狭いため少しの鼻水ですぐ詰まってしまいます。さらに耳と鼻をつなぐ耳管(じかん)も子どもの方が短くて水平に近く、鼻水や細菌が耳に届きやすい構造です。このような医学的背景から、小さなお子さんほど鼻水による症状や合併症が起こりやすいのです。
鼻水吸引が重要な理由
では、なぜ鼻水を吸引してあげる必要があるのでしょうか。鼻水吸引には以下のような目的やメリットがあります。
呼吸や睡眠を楽にするため
鼻が詰まっているとお子さんは呼吸が苦しく、特に就寝時に寝苦しくて何度も起きてしまうことがあります。吸引で鼻づまりを解消すれば、呼吸がしやすくなり睡眠の質も向上します。乳児の場合、鼻づまりでうまく母乳やミルクが飲めないこともありますが、吸引で鼻を通してあげれば授乳・食事がスムーズになります。
風邪や鼻炎を早く治すため
ウイルス性・細菌性の鼻炎では、鼻水にウイルスや細菌が含まれています。こまめに吸引して鼻水を除去することで、鼻腔内に病原体が長く留まるのを防ぎ、鼻炎や風邪の治りを早める効果が期待できます。逆に鼻水が長引くと炎症が慢性化し、治癒が遅れてしまいます。
中耳炎を予防するため
前述のとおり、鼻の奥には中耳(鼓膜の奥の空間)につながる耳管があります。鼻水で耳管の出口がふさがったり、鼻汁中の細菌が耳管を通って中耳に達したりすると中耳炎を起こしやすくなります。特に風邪のたびに中耳炎を繰り返すお子さんでは、鼻水を吸引して鼻腔内を清潔に保つことが予防につながります。
咳やのどの炎症を防ぐため
鼻水が多いと、喉の奥へ鼻水が流れ落ちて気管の入口に付着し、喉のイガイガ感や声がれ、さらには咳の原因になります。特に就寝中は横になっていることもあり鼻水が喉に垂れ込みやすいため、夜間から朝方にかけて咳き込むお子さんも少なくありません。鼻水を寝る前にしっかり吸引してあげることで、夜間の咳込みや喉の不快感を減らすことができます。実際、「朝起きたときの咳が減った」「夜ぐっすり眠れるようになった」という声もあります。
このように、鼻水吸引はお子さんの呼吸・睡眠・食事を楽にし、風邪の悪化や合併症を防ぐために重要なのです。小児科の中には「あまり無理に吸わなくても自然に良くなる」との意見もありますが、耳鼻科では日常的に鼻吸引処置を行い、鼻水放置による中耳炎・副鼻腔炎の例を多く診ているため、症状が強い場合は吸引を推奨する先生が多い傾向があります。
もちろん鼻水の量が少なく機嫌も良いときは無理に吸う必要はありませんが、鼻水が多かったり苦しそうなときは積極的に鼻水を吸ってあげることをおすすめします。
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鼻水を放置した場合に起こりうるリスク
お子さんの鼻水をそのまま放置していると、単に苦しいだけでなく思わぬ病気に発展する可能性があります。「たかが鼻水」と侮らず、以下のようなリスクを理解しておきましょう。
中耳炎のリスク
小児の代表的な合併症が中耳炎です。風邪をひいたときなどに鼻水が長引くと、耳管を通じて細菌やウイルスが中耳(鼓膜の奥)に達し、急性中耳炎を起こすことがあります。特に1~2歳頃までの赤ちゃんは耳管が太く短いため、鼻水が喉にまわりやすく、また耳にも菌が入り込みやすい構造です。そのため、「鼻水が出るたびに中耳炎になる」という子も珍しくありません。
鼻水を早めに吸引して綺麗にしておくことで、中耳炎への移行リスクを大幅に減らすことが可能です。実際、耳鼻科医の間では「鼻水ケアが中耳炎予防の基本」と考えられています。
鼻水を放っておくと、繰り返す中耳炎で聴力への影響や、滲出性中耳炎(治った後も中耳に液体がこもる状態)に移行してしまう恐れもあるため注意が必要です。
副鼻腔炎のリスク
もう一つ見逃せないのが副鼻腔炎(蓄膿症)です。鼻の奥や頬の中にある副鼻腔という空洞に膿が溜まって炎症を起こす病気で、幼児~児童でも風邪をきっかけによく発症します。風邪を引いて透明だった鼻水が黄色や緑色の粘い鼻汁に変わり、それが10日以上続く場合は小児副鼻腔炎が疑われます。鼻づまりがひどくなり、夜も口で呼吸するようになるため睡眠の質が低下します。さらに膿が喉に落ちることで湿った咳が長引く原因にもなります。
副鼻腔炎を放置すると慢性化し治りづらくなるほか、まれに眼の周囲にまで感染が広がる(眼窩蜂窩織炎など)危険性も指摘されています。幼児の場合、鼻を上手にかめないため副鼻腔炎になりやすく、完治にも時間がかかります。鼻水の段階でしっかり吸い取ってあげることが、副鼻腔炎への進展を防ぐ重要な対策となります。特に風邪が治った後も鼻水や咳だけ長引くようなときは要注意です。
このほか鼻水の放置による影響として、慢性的な鼻づまりから口呼吸の癖がつくことも挙げられます。口呼吸が続くと喉が乾燥してさらに風邪をひきやすくなるほか、睡眠中のいびきや乳児の哺乳困難、歯並びへの影響など長期的な問題につながる可能性があります。お子さんの健やかな成長のためにも、鼻水はできるだけ放置せず適切に対処してあげましょう。
自宅でできる鼻水吸引の方法と注意点
「鼻水を吸ってあげた方が良い」とはいっても、自宅で実際に赤ちゃんの鼻水を吸引するのはコツがいります。ここでは家庭での正しい鼻水吸引のやり方と安全に行うための注意点を解説します。初めは難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば誰でも上手にできますので、ぜひ参考にしてください。
正しい鼻水の吸引方法
自宅で鼻水を吸引する際の基本的な手順とコツは次のとおりです。
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吸引器の準備:使用する鼻吸い器(後述の手動または電動の機器)を清潔にセットします。電動の場合は電源を入れ、手動の場合はホースやポンプに不具合がないか確認しましょう。ノズルの先端部が清潔で乾いていることも確認してください。必要に応じて生理食塩水の点鼻を事前に行うと、鼻腔内が潤って粘っこい鼻水も吸いやすくなります(お湯で蒸らすか、入浴直後に行うのも効果的です)。
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体勢の確保:赤ちゃんや幼児を膝の上に寝かせるか、少し上体を起こした姿勢で抱っこします。暴れて危ない場合は、バスタオルでおくるみのように包むと手足の動きを抑えられて安全です。可能であればもう一人の大人に協力してもらい、頭を軽く固定してもらうとスムーズでしょう。
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ノズルの当て方:吸引器の先端ノズルを鼻の穴に軽く当てます。ポイントはノズルを奥に押し込みすぎないことと、角度を垂直ではなくやや斜め下方向にすることです。子どもの鼻は柔らかく、強く当てると鼻の穴(鼻翼)が吸い込まれて塞がりやすいので注意しましょう。片手でほほ(鼻の横)を外側に引っ張って鼻腔を広げながらノズルを当てると、鼻の奥の鼻水まで吸いやすくなります。
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吸引:はじめは弱めの吸引圧からスタートし、様子を見ながら徐々に強くします。いきなり最大パワーで「一気に吸い出そう」としないことが大切です。鼻水がズルズル取れてきても焦らず、少しずつ区切って吸引しましょう。一度に取り切れない場合は、数十秒休憩してから何度かに分けて吸います。特に奥の粘液は一度で全部抜こうとせず、休み休み吸う方が安全で効果的です。
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仕上げ:ある程度吸えたら一旦終了し、ティッシュや綿棒で鼻の入口に残った鼻水を優しく拭き取ります。反対の鼻も同様に吸引しましょう。最後に鼻腔内に生理食塩水を1滴垂らしておくと、粘膜が潤って鼻づまりの戻りを軽減できます。吸引後、お子さんが楽そうに呼吸しているか確認してください。
以上が基本的な流れです。慣れてくると数分でできるようになります。なお、寝る前や授乳前に吸ってあげると効果的です(タイミングについては後述のQ&Aでも説明します)。
吸引後は機器をしっかり洗浄し、ノズルやチューブ内を清潔に保って次回に備えましょう。
鼻水吸引時の注意点
家庭で鼻水を吸引する際、次のポイントに注意してください。お子さんの安全と、嫌がらず続けるコツにつながります。
強く押し込みすぎない
ノズルは鼻穴に「軽く当てる」程度で十分吸引できます。奥まで入れようとすると粘膜を傷つける恐れがあるためやめましょう。また先端がオリーブ型(丸みのある形状)のノズルであれば、無理に奥まで入らない設計なので安心です。
長時間連続で吸わない
一度に長く吸い続けると、鼻の中の粘膜を吸引し傷つけてしまうことがあります。実際、吸引しすぎると鼻血が出てしまうケースもあります。少量の鼻血であれば一時中断して様子を見るだけで心配ありませんが、続けて出血する場合はその日の吸引を中止してください。鼻血への対処法は後述のQ&Aでも解説しますが、「出血したら少し時間をあける」が鉄則です。
痛みが生じたら中止する
吸引中にお子さんが「耳が痛い」「上の歯が痛む」と言うことがあります。これは吸引により一時的に鼻とつながった耳や副鼻腔に陰圧がかかるためで、特に副鼻腔炎や中耳炎を起こしているときに起こりやすい症状です。痛み自体は一時的で深刻な問題ではありませんが、強い痛みを経験すると子どもが吸引を怖がって嫌がる原因になります。もし耳や歯の痛みを訴えたら、一旦吸引を止めて休ませてあげましょう。「たくさん吸いたいから」と強すぎる圧で長時間吸引しないことが大切です。
清潔を保つ
吸引器のノズルやチューブ、タンク部分は毎回しっかり洗浄・乾燥させましょう。鼻水にはウイルスや細菌が含まれるため、放置すると機器内で繁殖し次回使用時に再び菌を送り込んでしまう恐れがあります。各製品の取扱説明書に従い、適切なお手入れ(水洗い・煮沸消毒など)を行ってください。特に兄弟姉妹で共用する場合は、感染予防のため一層の衛生管理を心がけましょう。
子どもの機嫌に配慮する
鼻水吸引は子どもにとって決して楽しいものではありません。無理やり押さえつけると恐怖心を植え付けてしまう可能性があります。機嫌の良いタイミングを見計らって行い、終わった後はたくさん褒めたりご褒美シールをあげたりするのも効果的です。
以上の点に注意しつつ行えば、自宅での鼻水吸引も安全に、そしてスムーズに行えるようになります。最初はお子さんも泣いて嫌がるかもしれませんが、繰り返すうちにスッキリする感覚を覚えて自分から鼻を近づけてくれるようになる子もいます。
鼻水吸引器の種類とそれぞれの特徴
鼻水を吸引するための器具には様々な種類があります。大きく「手動タイプ」と「電動タイプ」に分けられ、それぞれ使い勝手や吸引力に違いがあります。ここでは各タイプの特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。お子さんの年齢や鼻水の状態、予算に応じて最適なものを選んでください。
手動タイプの鼻吸い器
手動タイプは電気を使わずに口や手の力で吸引する器具です。主に以下の2種類があります。
ポンプ(スポイト)型
先端が細いスポイト状になっており、ゴム球を握って吸引します。鼻穴に先を入れてゴム部分を離すと負圧がかかり、鼻水を吸い取る仕組みです。価格が安く構造がシンプルなので手軽ですが、一度で吸える量が少なく、ドロッとした鼻水は吸い切れないことも多いです。乳児の鼻垢(鼻くそ)やサラサラした鼻水を少し取る程度には便利ですが、本格的な鼻づまりには物足りないでしょう。
ホース(ストロー)型
細いチューブの一端を赤ちゃんの鼻にあて、もう一端を保護者が口で吸って鼻水を吸引するタイプです。いわゆる「ママ鼻水トッテ」などの商品が代表的です。吸引力を自分で加減でき、鼻水の状態に合わせてある程度しっかり吸えるのが利点です。吸った鼻水は途中のタンクやフィルターに溜まる構造になっており、親の口に直接入ることはありません。ただし勢いよく吸いすぎると一部口に入ってしまう可能性もゼロではなく、また親が風邪をもらってしまうリスクも指摘されています。加えて、手動で長時間吸うのは親も疲れるため、大量の鼻水を頻回に処理するには負担が大きいでしょう。
手動タイプ全般の特徴
手軽さと安価さが魅力ですが、吸引力や持続力はどうしても限界があります。軽い鼻づまりの時や外出先の応急対応には便利な一方、中耳炎や副鼻腔炎を繰り返すような子には十分吸えない場合もあります。
個人的には、次に述べる電動タイプの使用を患者様にお薦めしております。
電動タイプの鼻吸い器
電動タイプはモーターの力で強い吸引力を発生させる機械です。スイッチひとつで吸引できるため効率的かつ短時間で鼻水を除去できます。電動の鼻吸い器には大きく「携帯型(ハンディ)」と「据え置き型」の2種類があります。
携帯型(ハンディタイプ)
電池式または充電式で動く小型の電動鼻吸い器です。片手で持てるハンディサイズで、外出先でも使いやすいよう設計されています。操作はボタンを押すだけで簡単、製品によっては音楽が流れて注意を逸らせるものもあります。携帯型のメリットはコンパクトで軽量な点と、比較的安価(数千円程度から)な点です。しかし、据え置き型に比べるとモーターの出力が弱く、吸引力はやや劣ります。サラサラした鼻水なら吸えますが、粘度の高い鼻水や奥の方にある鼻汁は十分に吸いきれないことも多いです。実際、「音は静かで携帯性も良いけれど、結局あまり吸えず出番が少なかった」という声もあります。鼻風邪の初期など軽い症状向きで、日常的に鼻水が多い子には物足りない可能性があります。
据え置き型(コンセントタイプ) おすすめ!
家庭用コンセントに繋いで使う本格タイプの電動吸引器です。据え置き型はモーターもパワフルで、耳鼻科での鼻吸引器に近い性能を持っていると思います。大きめの本体にチューブとタンクを接続するスタイルで多少場所は取りますが、そのぶん吸引力は非常に強力です。
実際、耳鼻科医が自宅用に購入して愛用している例もあるほどで、私自身も子供が小さい時には自宅で使用していました。
据え置き型のメリットは粘っこい鼻水や奥の鼻汁までしっかり吸い取れる点と、長期間の使用に耐える耐久性です。デメリットとしては価格が1万円前後と高価なこと、そして本体や電源コードの取り回しが必要なため持ち運びには向かないことが挙げられます。
パワフルな分動作音が大きい製品もありますが、近年は静音性が高められたモデルも登場しています。
電動タイプ全般の特徴
短時間で大量の鼻水を吸引でき、重度の鼻づまりにも対応可能なのが最大の利点です。家庭で耳鼻科さながらの鼻水ケアができるため、頻繁に病院へ通えない場合の強い味方になります。ただし価格は手動より高めで、お手入れ(各部品の洗浄・乾燥)も必要です。各家庭のニーズに合わせて、携帯型と据え置き型を使い分けても良いでしょう。
おすすめの鼻水吸引器(メルシーポット・シュポット)
ここからは具体的なおすすめ電動鼻水吸引器を2つご紹介します。いずれも多くの家庭で支持され、耳鼻科医や先輩ママたちからの評価も高い製品です。特徴を把握して、ご家庭に合うものを選んでみてください。
メルシーポットの特徴
「メルシーポット」はシースター株式会社(BabySmileブランド)が販売する電動鼻水吸引器です。据え置き型電動吸引器の代表格であり、育児中のママから「育児の神アイテム」と称されるほど人気があります。実は私もこれを自分の子供に使用していました。
主な特徴は次のとおりです。
強力な吸引力
メルシーポットは-83kPa前後という非常にパワフルな吸引圧を発揮します。耳鼻科の機械に匹敵する吸引力で、粘度の高い鼻水もグングン吸い取ります。「初めて使ったとき、その強さに驚いた」という声もあるほどで、鼻づまりを解消できるのが魅力です。吸引力が強い分、吸引時間が短くて済むためお子さんの負担も軽減されます。
簡単操作&お手入れ
使い方はスイッチを入れてノズルを鼻に当てるだけで、とても簡単です。複雑な操作や調節も不要なので、機械が苦手な方でも安心して使えます。さらに部品点数が少なく丸洗い可能な構造で、後片付けも簡単です。忙しい育児の中で日々使うものだからこそ、お手入れの手軽さは重要ですよね。コンパクト&軽量化も進んでおり、省スペースで収納できるのも助かります。
高い静音性
パワフルな据え置き型は音が大きいという欠点がありますが、メルシーポットは動作音を50dB以下に抑える静音設計を実現しています。50dBは「静かな事務所」程度の音と言われ、据え置き型ではトップクラスの静かさです。というメーカー情報ですが、実際はやはりそこそこうるさいな、という音はあると思います。
価格はモデルにもよりますが1万円弱(約9千~1.2万円前後)と決して安くはありません。しかし「もっと早く買えば良かった」「値段以上の価値がある」という口コミが非常に多く、長期間使えることを考えればコスパは高いと言えるでしょう。
実際、メルシーポットを下の子が0歳から使ったら中耳炎にならずに済んだという体験談もあり、投資するだけの効果は十分期待できます。「多少高くても確実に吸えるものが欲しい」という方には最有力候補です。
シュポットの特徴
「シュポット(SHUPOT)」はベビー用品大手のピジョン株式会社が2023年に発売した電動鼻水吸引器です。こちらも据え置き型に分類されますが、丸みのあるバケット状の本体デザインでインテリアになじみやすく、発売以来人気急上昇中の製品です。シュポットの主な特徴を挙げます。
抜群の吸引性能
シュポットはピジョン独自開発の新型ポンプを採用しており、-80kPaから細かく吸引圧を調節可能です(最大圧はメルシーポットに僅かに劣りますがほぼ同等クラスです)。特徴的なのは吸引圧だけでなく吸引流量にも着目している点で、鼻水を皮膚から浮き上がらせてから一気に運ぶという効率的な吸引を実現しています。その結果、サラサラ鼻水でもネバネバ鼻水でもスムーズに吸引できるのが強みです。奥に溜まりがちな鼻汁もしっかり吸い出せるため、総合的な吸引性能は非常に高いと評価されています。
フィット鼻ノズルで安全・快適
シュポットには赤ちゃんの小さな鼻にぴったりフィットし、かつ鼻粘膜を傷つけにくいやわらか素材の「フィット鼻ノズル」が付属します。鼻に当てたときの痛みや違和感を軽減し、吸引時間を最小限に短縮できる工夫です。吸引中に赤ちゃんが嫌がりにくい設計になっており、実際に「以前より子どもが怖がらず使わせてくれる」との声もあります。また、ノズルからチューブへの経路に鼻水キャッチャーという容器があり、吸引した鼻水がチューブ内部に流れ込まない構造になっているのもポイントです。これによりお手入れが簡単で衛生的に使えます。
静音設計とコンパクト収納
シュポットは従来ピジョン製品と比べ動作音を約10%ダウンさせた静音設計です。赤ちゃんが怖がる大きな音を抑え、夜間でも使いやすいよう配慮されています。また、本体上部にホースやノズル類をまとめて収納できるスペースがあり、使わないときはコンパクトに片付けられます。白基調のおしゃれなデザインも相まって、リビングに置きっぱなしでも生活感が出にくい点は育児用品として嬉しいですね。
価格は発売当初で約1.2〜1.3万円前後と据え置き型の中でもやや高めの設定でした。ただし性能や使い勝手の良さから「値段に見合う満足度」「むしろそれ以上の価値」との評価が多く、累計販売台数はすでに20万台を超えるヒット商品となっています。メルシーポットとの比較では、吸引力は互角、シュポットの方が掃除のしやすさや収納面で優れるとの意見もあります。
いずれにせよ両製品とも性能に定評があり、大きなハズレはありません。強いて違いを言えばデザインや細かな機能の好みになるでしょう。ピジョンという信頼ブランドで選ぶならシュポット、実績豊富な定番で選ぶならメルシーポットといったところです。どちらを選んでも、お子さんの鼻水ケアに心強い味方となってくれるはずです。
鼻水吸引に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 鼻水吸引は毎日しても大丈夫?頻度の目安は?
A. 基本的に、お子さんが嫌がらなければ毎日何回行っても問題ありません。むしろ鼻水が多いときはこまめに吸ってあげる方が快適です。頻度の目安としては、鼻づまりで苦しそうなときや、寝る前・授乳前などに1日数回行うのがおすすめです。例えば朝起きた時・保育園や幼稚園から帰った時・お風呂上がり・就寝前などが良いタイミングでしょう。
ただし、症状が軽い場合や鼻水の量が少ない日は無理に毎日吸う必要はありません。「出ているときに、その都度吸う」くらいの感覚で大丈夫です。また、一度の吸引時間を長くしすぎないよう注意し、前述したように数回に分けて少しずつ吸うようにしましょう。適切に行えば毎日使っても鼻の粘膜に大きな負担はかかりません。むしろこまめな吸引が中耳炎や副鼻腔炎の予防につながるので、必要なときには遠慮なく使ってあげてください。
Q2. 赤ちゃんが嫌がって泣くけど、無理に吸引すべき?
A. 無理強いは禁物ですが、多少泣いても短時間でサッと済ませる方が結果的にお子さんのためになります。鼻水が残っていると結局苦しい思いをするので、親御さんも心を鬼にして対応せざるを得ない場面はあるでしょう。とはいえ、暴れる子を力任せに押さえつけるとケガのもとです。上記「正しい吸引方法」で述べたように、タオルでくるんだり大人が2人でサポートしたりして、安全に配慮してください。泣いても手早く終わらせてあげることが大切です(吸引力の強い電動器具なら吸引時間が短くて済みます)。終わった後はしっかり褒めて抱きしめ、「スッキリして良かったね」と笑顔で伝えてあげましょう。
Q3. 鼻水を吸引したら鼻血が出た…どう対処すればいい?
A. 吸引後に少量の鼻血が出ることがありますが、慌てずにいったん中止して様子を見ましょう。鼻粘膜が充血・炎症しているときは傷つきやすく、吸引の刺激で出血することがあります。ティッシュで軽く押さえて数分待てば自然に止まる程度の出血であれば心配いりません。この場合はその日はもう吸引せず、鼻血が完全に止まったのを確認してから再開してください(目安として数時間~半日程度あけると良いでしょう)。
鼻血を予防するには、前述の「強く押し当てない」「長時間連続で吸わない」ことが重要です。また、乾燥で粘膜が切れやすい状態だと鼻血が出やすいので、部屋の湿度を適度に保つことや事前に生理食塩水で鼻を潤すことも効果的です。小さな鼻血に過度に神経質になる必要はありませんが、「出たら中断」が基本ルールと覚えておきましょう。
Q4. 吸引中に耳や歯が痛いと言うけど大丈夫?
A. 吸引の際、鼻とつながっている耳や副鼻腔に一時的に陰圧(真空圧力)がかかるため、中耳や上の歯(上顎)がキーンと痛むことがあります。特に、すでに鼻周辺の炎症(中耳炎や副鼻腔炎)がある場合や、鼻づまりがひどい時に起こりやすい現象です。この痛み自体は一過性で、組織に大きなダメージを与えるものではありません。ですから「多少耳がツーンとする程度」であれば心配いりませ。ただし、痛みが強かったり子どもが激しく嫌がったりした場合は無理せず吸引を中止しましょう。強い痛みを経験すると吸引への恐怖心につながり、次回以降ますます困難になる恐れがあります。痛みを訴えたら「ごめんね、痛かったね」と声をかけて一旦休止し、しばらく時間をおいてから弱めの圧で再開しましょう。
Q5. 鼻水吸引はいつ行うのが効果的?寝る前が良い?
A. 効果的なタイミングは「鼻が詰まって困る前」です。具体的には、就寝前と授乳・食事の前は吸引しておくと本人が楽になります。夜寝る前に鼻をきれいにしてあげれば、鼻づまりで途中覚醒しにくくなりグッスリ眠れるでしょう。また、乳幼児は鼻が詰まっているとうまくミルクを飲めず苦しくなりますから、授乳前にも吸引をおすすめします。保育園や幼稚園に通うお子さんなら、登園前やお迎え後に吸ってあげると良いですね。さらにお風呂上がりも狙い目です。お風呂の蒸気で鼻腔内が潤い、鼻水が柔らかくなっているため吸引しやすく、子どももリラックスした状態で行いやすいでしょう。逆に、嫌がって大泣きした直後など興奮状態では余計うまくいきませんから、機嫌が比較的よいタイミングを見計らうこともコツです。一日に何度もする場合は、最低でも数時間は間隔をあけるようにしましょう(例:朝・昼・晩の3回など)。鼻水の量や症状に応じて柔軟に対応してください。要は「苦しくなる前に吸って楽にしてあげる」ことが大切です。
Q6. どんなときに病院(耳鼻科)を受診すべき?
A. 鼻水吸引はあくまで対症療法(症状を和らげるケア)です。以下のような場合は自宅ケアだけに頼らず耳鼻科医の診察を受けましょう。
発熱や耳痛を伴うとき
熱が高かったり耳を痛がる様子がある場合、中耳炎などを併発している可能性があります。抗生剤を含めた適切な治療が必要になるため受診してください。
黄色〜緑色の鼻水が長引くとき
鼻水の色が濃く粘りがある状態が10日以上続く場合は、副鼻腔炎に進展している恐れがあります。放置すると治りづらくなるため早めに受診しましょう。
咳がひどくなっているとき
鼻水が喉に回って気管支炎を起こしていたり、ゼーゼーと喘鳴が出ていたりする場合は小児科も含め受診を検討してください。
鼻水吸引を嫌がり激しく抵抗する場合
どうしても自宅で吸えない場合、耳鼻科で専門の吸引器で奥までしっかり吸ってもらうことができます。嫌がる子でも短時間で済むよう細い柔らかいチューブを使ってくれる医院もあります。無理せずプロの手を借りましょう。
鼻血が頻繁に出る場合
毎回のように鼻血になる、または出血がなかなか止まらない場合は粘膜に傷や炎症があるかもしれません。一度診てもらってください。
このほか、鼻づまりが慢性的に続いて睡眠や食事に支障が出ているケースや、親御さん自身が不安なときも遠慮なく受診してください。耳鼻科では原因に応じたお薬(鼻水を出しやすくするシロップや点鼻薬など)も処方されますし、ネブライザー療法といって鼻の粘膜に薬を噴霧する治療も行えます。
「ただの鼻水で受診していいのかな?」と迷わず、気になる症状があれば早めに専門医に相談するようにしましょう。
Q7. 耳鼻科での鼻水吸引について
当院では、しっかり奥まで吸引できるシリコン製の細長い吸引管(アマツ式吸引管)もご用意しております。(お子様からしたら怖いので、ほとんどの場合は嫌がりますが)
この吸引管の特徴は、先が柔らかいシリコン製で出来ており、小さなお子さまでも鼻の内を傷つけることなく、しっかりと鼻水を吸い取ることができます。
また、管が細長い作りなので、鼻の奥まで十分に吸引することができます。
- オリーブ菅
先の近くが膨らんでいるため、鼻の奥まで挿入しないタイプの吸引化です。
鼻の奥に入れないため、主に鼻の粘膜が傷つきやすい子ども(乳幼児~未就学児)の患者さんの吸引に使います。
先の膨らんでいる部分はガラスで出来ているので、鼻水の色を確認しやすいというメリットがあります
先端が丸いのである程度の年齢になれば嫌がらずに施行できます。
- アマツ式吸引管
先が柔らかいシリコン素材で出来ているため、鼻の粘膜が弱い人やお子さんの鼻の吸引に使用します。オリーブ吸引管や金属製吸引管より先が細長いため、奥の方に残っている鼻水も吸い出せるようになっています。
透明な部分はシリコンという柔らかい素材で出来ているため、鼻の粘膜を傷つける可能性が低いです。 子ども(乳幼児~未就学児)の患者さんの吸引に使うことが多いです。子どもの患者さんは、もともと鼻の粘膜が柔らかく傷つきやすい上に、吸引を嫌がり暴れると金属製の吸引器では鼻の奥を傷つけてしまうこともあるためです。
見た目は先端が細いですし、奥まで入れられる違和感からたいていのお子様は嫌がります。
私としてはせっかく耳鼻科に来たから鼻はしっかり吸った方が良いという考えですが、お子様がトラウマになってしまうこともあると思いますので、鼻水吸引のご意向は遠慮なくお申し付けください。
まとめ:親へのアドバイスと耳鼻科受診の目安
鼻水吸引は、小さなお子さんの健康と快適さを守るための大切なケアです。鼻水には本来役割がありますが、子どもは自力で対処できないため周囲の助けが必要になります。適切に吸引してあげれば、呼吸が楽になり、夜もぐっすり眠れ、結果的に機嫌よく過ごせるでしょう。また中耳炎や副鼻腔炎といった辛い合併症を防ぐことにもつながります。はじめは戸惑うかもしれませんが、本記事で紹介した方法やコツを試しながら、ぜひご家庭での鼻水ケアに取り組んでみてください。
もちろん、無理は禁物です。どうしても難しいと感じるときは、耳鼻科で鼻水吸引だけしてもらうことも可能です。専門の機械を使えば短時間で奥の方までしっかり吸ってもらえますし、「毎回通院するのは大変…」という方は先述の家庭用電動吸引器の導入も検討してみましょう。お子さんによっては吸引後にネブライザーで鼻粘膜の炎症を抑える治療を行った方が早く良くなるケースもありますので、症状が長引くときは遠慮なく医師に相談することが大切です。
育児中は何かと心配事が尽きませんが、鼻水ひとつとっても適切なケアでお子さんの笑顔を守れる場面があります。鼻水吸引を上手に活用して、少しでも快適に過ごせるようサポートしてあげましょう。最後に、本記事の内容を参考にしつつ、お子さんの様子に合わせて無理のない範囲で実践してみてください。「つらい鼻水は早めに対処」して、元気な毎日を取り戻しましょう!