マイコプラズマが流行しています
東京都でマイコプラズマが流行しています
以下のグラフは、東京都におけるマイコプラズマの報告数です。
今年は赤色なので、現在かなり流行していることが分かります。
マイコプラズマ感染症は、特に咳や発熱を特徴とする呼吸器感染症であり、若年層や小児に多く見られます。感染力が強く、学校や家庭内での集団感染が懸念されるため、早期診断と適切な治療が重要です。
マイコプラズマ感染症の症状
- 初期症状:軽い風邪のような症状(微熱、軽い咳、倦怠感)から始まり、次第に咳が激しくなり、長引くことが特徴です。特に乾いた咳が続くことが多く、夜間に悪化する傾向があります。
- 肺炎への進行:一部の患者では、症状が進行してマイコプラズマ肺炎を引き起こすことがあります。肺炎になると、持続する高熱、胸痛、息切れなどの症状が見られますが、聴診上は異常所見が乏しいこともあり、診断が遅れることがあります。
- その他の症状:咽頭炎や中耳炎を併発することもあり、小児では特に注意が必要です。また、発疹や関節痛などの全身症状が出ることもあります。
マイコプラズマ感染症の感染経路
- 感染経路:主に飛沫感染や接触感染によって広がります。咳やくしゃみによる飛沫を介して感染します。
- 潜伏期間:2~3週間と長いですので、周囲にマイコプラズマにかかった人がいたら、しばらくはご用心!
検査と診断
診断が比較的難しく、聴診器で聞いてもほぼわからないこと、迅速検査の感度が高くないことが理由として挙げられます。
また、聴診器で聞いただけではわかりませんので、診断に時間がかることもあります。
- マイコプラズマ抗原検査:もっとも簡便かつ15分程度で結果が出ます。しかし、咽頭から採取するため感染の本体である肺や気管支からは距離が遠く、良好な検体を採取できないことができません。菌が取れなければ、確実な検査にはなりません。検査のタイミング 次第ですが、上気道の菌量は下気道の約1%以下とも言われています。
よって、抗原検査は、検出感度が低い(陰性であっても信頼性が低い)のが問題となります。インフルエンザや新型コロナの抗原検査はそれなりに高い感度が報告されていますが、マイコプラズマに関しては50%程度と、とても低いです。検査キット自体は良くなっており、陽性的中率は90%近くなっていますが、検体がしっかりとれないのでは信頼性のある検査になりません。
抗原検査が陰性だからと言って、治療を開始しないと機会損失になりえます。 - LAMP法:マイコプラズマ菌の遺伝子を検出するための迅速で高感度な検査方法です。有用な検査ですが、できる施設は限られており、当院も施行できません。
- 血清抗体検査:患者の血中に存在するマイコプラズマ抗体を測定することで、感染の有無を確認します。初期段階で陽性判定が出ることが少ないため、初期(急性期)・後期(回復期)の2度にわたって採血することが理想的ですが、クリニックでの日常診療では現実的ではないため、一度の採血で判断することがほとんどです。
- レントゲン検査:レントゲンでマイコプラズマの診断は困難ですが、肺炎に至っているかどうかを判断する目的で行われます。
治療
- マクロライド系抗生物質:アジスロマイシンやクラリスロマイシンが第一選択となります。これらはマイコプラズマ菌に対して高い効果を示し、比較的副作用が少ないため、特に小児に対してよく使用されます。
アジスロマイシン 3 日間
クラリスロマイシン 10日間 - テトラサイクリン系抗生物質:ドキシサイクリンなどがマクロライド系に耐性を持つ菌株にも有効です。小児では基本的には使用されません。
ミノマイシン 7 日間
ビブラマイシン 7日間 - ニューキノロン系抗生物質:レボフロキサシンやモキシフロキサシンは、重症例やマクロライド系抗生物質が無効な場合に使用します。
レボフロキサシン 日 7 日間
トスフロキサシン 7 日間
適切な抗生物質治療を受けることで、多くの方は症状が軽減し、数日から1週間程度で回復が見込まれます。
予防と感染拡大防止
- 手洗い・うがい:外出先からの帰宅時や食事前後には、石鹸を使った手洗いと適切なうがいを徹底しましょう。
- マスクの着用:外出時や人が多く集まる場所ではマスクを着用し、飛沫感染を防ぐことが重要です。
- 咳エチケット:咳やくしゃみをする際は、ティッシュや腕で口と鼻を覆い、周囲に飛沫が広がらないようにしましょう。
マイコプラズマは自然に回復する感染症で、絶対的に抗生剤が必要な疾患ではないため、あまりあわてて診断したり、抗生剤を使用したりする必要はありません。一般的には、熱や咳がでて2~3日解熱しないときや1週間以上痰の絡んだ咳がつづくときにマイコプラズマを疑い検査や抗生剤を開始します。