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小児の急性中耳炎について

親として、お子さまが痛がる姿を見るのは、とてつもなくつらいことでしょう。子どもの耳の痛みの最も一般的な原因の1つは、急性中耳炎です。急性中耳炎の症状、原因、治療法を理解することは、お子さまが適切な医療を受けるために必要不可欠です。この記事では、急性中耳炎について知っておくべきことをすべて説明します。

急性中耳炎とは

耳の穴からまっすぐ奥に入っていくと鼓膜(こまく)という膜があります。この鼓膜の奥にあるスペースを中耳(ちゅうじ)と言います。急性中耳炎とは、鼓膜の奥にある中耳に感染する病気です。中耳と鼻の奥をつなぐ耳管を通して、細菌やウイルスが中耳に侵入することで感染が起こります。
小児にも成人にも発症し得る病気ですが、成人では頻度の少ない疾患で、ほとんど5歳以下の小児での発症となります。
耳の『カゼ』と考えて下さい。決して特別な病気ではなく、急性中耳炎に3歳以下の小児の約80%少なくとも1回はかかったことがあるというデータがあるほど小児に多い病気です。

上図の「中耳」の部分に炎症が起こります。ほとんどの場合は鼻や喉で生じた感染(ウイルスや細菌)が原因で、耳管(耳と鼻の奥をつないでいる細い管)を介して、中耳に感染が起こります。

小児急性中耳炎の症状について

急性中耳炎の症状は、お子さまによってさまざまです。症状が軽い子もいれば、激しい痛みや不快感を感じる子もいます。一般的な症状には、以下のようなものがあります。

耳の痛み

急性中耳炎の特徴は突然起こる耳の痛みです。お子さんの場合は、日中はそれほど自覚が出ず、夜間寝る前や寝ている間に訴えることが多いです。
※小さいお子さまでは痛みを訴えることができず、泣いたり、頻繁に耳をさわることが急性中耳炎の危険信号です。

発熱

お子さまで38度くらいの高熱がでることもあります。大人の方では熱が出ないことも多いです。

耳だれ

中耳にたまった膿(うみ)が、鼓膜が破れて耳だれとして出てくることもあります。耳だれが出ると膿が出たことになりますので痛みが一時的に軽減されることが多いです。破れた鼓膜はほとんどの場合、自然にふさがりますので過度な心配はいりません。

聞こえにくい

中耳に膿が貯留するため、音の振動が伝わりにくくなります。水の中に入っているのと同じような状況です。通常は中耳炎が治れば聞こえにくさも改善します。
中耳の炎症が内耳まで波及する中耳炎性内耳炎という病気があり、その場合はより高度の聞こえの悪さやめまいを訴えることがあります。

小児急性中耳炎の原因について

風邪をこじらせ、鼻やのどの炎症に引き続いて起こる場合が多いです。ほとんどの場合が、発症する直前に鼻汁が出ていた、喉が痛かったなどの症状を訴えます。
中耳炎は耳の病気なので、「耳の穴から細菌が入っておこる」というイメージがありますが、実際は耳管(耳と鼻をつなぐ管)を通して、中耳に細菌やウイルスが入ることにより、急性の炎症が生じ、膿がたまる病気です。お母さん方が心配されることのある、「耳の外から水や菌が入って急性中耳炎になる」といった事は通常起こりません。(その場合は外耳炎になります)

小児急性中耳炎の最も多い原因菌は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスです。これらの細菌が、風邪やアレルギーのために塞がれた耳管を通って中耳に侵入して発症します。

保育園などで集団保育を受けている場合や、2歳以下でまだ免疫力が十分ついていない状況などでは重症化したり、再発を繰り返しなかなか治らない場合があります。ほとんどのケースで成長と共にかかりづらくなります。

小児急性中耳炎の診断について

お子さまが急性中耳炎の疑いがある場合は、基本的には医師の診察が必要です。多くの場合は小児科か耳鼻科を受診されるでしょう。医師はお子さまの耳を診察し、赤み、腫れ、鼓膜の裏側の液体など、感染の兆候を確認します。場合によっては、難聴かどうかを判断するために、聴力検査をお勧めすることもあります。

鼓膜の所見は耳鏡という器具を使用して確認しますが、耳鼻科では細いカメラを使ってより詳細に確認することができることと、写真の撮影ができるので改善の度合いを経時的に記録することができます。また、耳垢がたまっている場合は鼓膜所見を確認することができないため、耳垢除去ができる耳鼻科の受診が必要となります

小児急性中耳炎の治療法

急性中耳炎の治療法は、感染症の重症度によって異なります。軽度の場合はアセトアミノフェンなどの痛み止めのみを勧めることがあります。中等症以上の場合は、抗生物質を使用しながら治療していきます。近年は保育園を中心に薬剤耐性菌の増加が問題となっておりますので、むやみに強い抗生物質を投与することを避ける方針となっています。
主に急性中耳炎診療ガイドライン(2018)に沿って治療方針を決定いたします

急性中耳炎診療ガイドライン(2018)はこちら

急性中耳炎の治療に際して、耳の治療と同じくらい大事なことは鼻の治療です。上述の通り、鼻や喉の風邪から引き続いて起こるのが急性中耳炎です。抗生物質で耳の状態が改善したとしても、鼻の症状が続いている場合は、すぐに再燃してしまうことがあるため、中耳炎が良くなっても鼻の症状が続いている場合は油断できません。

※ 鼓膜切開について

下記のような状況の場合、鼓膜を少しだけ切って膿を出す治療をすることもあります。
膿がたまって鼓膜がはれ、痛みが強いとき、高熱が持続する場合

  • 鼓膜は切開しても、通常数日でふさがります。特にお子様の場合、ご両親が希望され、切開に同意される場合のみ施行し、無理やり切開することはありませんので、ご安心下さい。近年は抗生物質の進歩により、鼓膜石灰が必要なほどの重症例はかなり減少してきました。

※ 急性中耳炎は放置すると再発する可能性が高く、鼓膜の穴が閉じなくなったり、滲出性中耳炎に移行することもあるため、完全に治すことが重要です。年齢性の問題も大きく、特に未就学児は構造的になりやすく、注意が必要です。  

小児急性中耳炎を予防するために必要なこと

急性中耳炎を全く起こさせなくするという方策はありません。しかし、以下のようなことを行いお子さまの急性中耳炎を発生率を下げることは可能です。

1.肺炎球菌結合型ワクチンを受ける

お子さまには肺炎球菌結合型ワクチンを含む、全ての推奨予防接種を受けさせることが必要です。肺炎球菌は、AOMの主要な原因の一つであり、肺炎や敗血症などの重篤な疾患も引き起こす可能性があります。肺炎球菌結合型ワクチンは、肺炎球菌による感染症を予防するために重要なワクチンです。

2.副流煙にさらされないように気をつける

急性中耳炎にかかるリスクを高める副流煙にさらされないように気をつけましょう。副流煙は、たばこの煙を吸わない人でも、その周りにいるだけで健康に悪影響を与えます。お子さまが健康に育つためには、副流煙にさらされないように気をつけることが大切です。

3.良い衛生習慣を身につける

定期的に手を洗う、おもちゃを清潔に保つなどの良い衛生習慣を身につけることが大切です。お子さまが健康で元気に育つためには、感染症を予防するための衛生習慣を身につけることが必要です。特に、定期的に手を洗うことや、おもちゃを清潔に保つことは、急性中耳炎の予防につながります。

4.哺乳瓶を使った寝かしつけを避ける

哺乳瓶を使った寝かしつけは、急性中耳炎のリスクを高める可能性があるため、避けたほうがよいです。哺乳瓶を使った寝かしつけは、乳児が寝ている間に液体が中耳に入り込むことがあり、中耳炎を引き起こす可能性があります。そのため、安全な寝かしつけ方法を選ぶことが大切です

子どもの急性中耳炎はいつ受診するべきか

お子さまに急性中耳炎が疑われる症状が見られる場合は、医師の診察を受けるようにしてください。急性中耳炎になっている場合、最も多い症状は耳の痛みです。耳の痛みは日中遊んでいるときには自覚されにくく、夜寝る前や寝てから(ほかにやることがないため)自覚されることが多いです。夜間の場合は、救急外来を受診するほど急ぐ病気ではありません。もしご自宅にアセトアミノフェンなどの鎮痛薬があればまずは飲ませて症状をとってください。1,2日以内くらいで日中に病院を受診すれば問題ありません。

子供の急性中耳炎に関するよくある質問

Q:急性中耳炎はほかの人にうつりますか?

A: はい、AOM は伝染する可能性があります。AOMの原因となる細菌やウイルスは、密接な接触によって人から人へ伝染する可能性があります。

2.AOMはどのくらいで治るのですか? A: AOMの症状は数日から1週間続くことがあります。治療により、ほとんどの子どもは数日以内に気分が良くなってきます。

3.AOMで難聴になることはありますか? A: はい、AOMを放置しておくと難聴になる可能性があります。お子さんにAOMの症状がある場合は、医療機関を受診することが重要です。

まとめ

急性中耳炎は、痛みや不快感の原因となる、お子さまによく見られる病気です。急性中耳炎の症状、原因、治療法を理解することは、お子さまが適切な医療を受けられるようにするために、ご両親にとって不可欠です。急性中耳炎を予防し、早期の診断と治療を受けることで、ご両親はお子さまの聴力と全身の健康を守ることができるのです。

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